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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
変わっていくもの
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二人の自分

 最後に、これからについての話になった。

「一人になるのは、なんだか寂しい」

 美久も、今でも同じ気持ちなのか。

「自分同士、二人で一人だったから」

「14年間一つだった。でもこの先、一緒に人生を歩む人が出来たら14年以上のものになるんじゃないかな」

「そうかもね、形は変わっていくから。だったら、戸惑っているばかりじゃなくて、自分はその中で最善を尽くしたい」

 以前に見た三人の夢が心に浮かぶ。今ならかつての自分と美久の二人が見えるはずだ。そう確信できる。だけど、悩み苦しんでた頃の、三人の人間が見えたイメージも覚えておきたい。

 そう、一つであったことを忘れたくないから、

「この現象の原因はいつか知りたいと思っている。科学か物理か、この現象が幻覚や幻想の可能性が高ければ精神医学の方か。何か一部でも解明できればと」

「奇遇ね。自分もそう考えていた」

 良かった。

「これこそ、情報共有が必要になるね」

「異なる分野からアプローチしていくのがいいのか、同じ道を二人三脚で進む方がいいのか。全くの徒労に終わる可能性は高いが、それでもいい――」

「いいよ。構わない」

 美久は問いかける前に返事をしてくれた。

「それじゃ、協力していこう。二人に分離したと思ったら、今度はパートナーになる訳か」

「結構、うまくいくんじゃない?」

「喧嘩別れでもしないように気を付けようか」


 太陽が傾き、時間も遅くなってきたので美久は帰り支度を始める。ハンガーにかけていたグレーのコートを渡す時、それが古くなって最近着ていなかった事を思い出した。

「事故の時に来ていたのはボロボロになっちゃって。新しいのは買ってもらったけど、ここに来るなら一つだった時の方を着ていたかったから」

 そのコートを着た美久の姿は、懐かしかった。


 足はかなり良くなったので、別に見送りはいらないと言われた。

 帰り際、玄関前で美久にハグをしようと提案してみた。

「気持ち悪いよ」

 といって美久は笑った。そして二人で抱き合った。

 もう一人の体温、もう一人の拍動、もう一人の存在。それをしっかりと感じることが出来た。

 離れた美久は靴を履き、ドアノブに手をかけたところでこちらに向き直った。

 そして、お互いに別れの挨拶をした。

「さよなら村山美久」

「さよなら飯田誠。またね」



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