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どうなったとしても
「無意味なものかもしれないけど、今の状況についての仮説をこの前また一つ思いついたよ」
と美久は語り出した。
どんなものだろう? 解釈は無限に出来る。
「あの事故の時についに二重人格になった、っていうもの。実はまだ一人のままで、でも美久から誠に切り替わったら美久側の記憶が消えて、誠から美久に切り替わったら今度は誠側の記憶が消えてそれまでの美久側の記憶が復活する。つまり、お互いに干渉することのない二重人格が誕生した、という。どうかな」
「じゃあ、二人に別れたと思っていたのは実は間違いだったと」
「二重人格の影響での勘違い、という事。――もしそうだったらどうする?」
美久の質問に頭をかきながら答える。
「今更な感じはするけど、悪くはないね。存在の激変が本当は無かった。だとしても、以前とは違って理解してくれる人がいるから。でもその新しい状態になっていたとしても、それを知ることは出来ないね」
「そうだよね」
今の時点で、答えは出ない。
「もし明日、明日じゃなければ明後日、また一つに戻っていたら? それかずっと先、おじいさんになった頃に戻ったとしたらどうする?」
この美久の質問はただの思考実験の域を超えない。でも、自分の答えは決まっている。
「そういった変化があったら、その時点でまた考えるさ」
「そっか」




