自分の部屋
一時間位話したところで、母は仕事先から電話が来てヘルプで出勤しなければならなくなった。
「ごめんなさいね。もっと話してたかったけど」
「気にしないで、大丈夫」
名残惜しそうに振り返る母に声をかける。
「また来てくれるから」
美久ならきっと。
母が出ていって二人になったので自分の部屋に行こうかと聞く前に、
「部屋に行こう」
と美久から要望があった。リビングから移動する。
「うーん、新居よりこっちの方がしっくりくる」
「新居はどんな感じ?」
「悪くないかな。ちょっと狭いけど新しいから全体的にきれいで」
部屋に入ると美久は軽く全体を見渡してからテーブルの前に座った。
「変わらないね」
「年末に大掃除したぐらいだから」
「……そうだ、アルバム見たい」
意外な要望だった。
「じゃあ取ってくるよ」
一旦リビングに行って本棚からアルバムを取って戻ってくると、美久がベッドで横になっていた。
「何してるんだ? ……ああそういう事か」
「察しがいいね」
美久と誠であった頃の、誠としての一日の始まりを追体験しているんだ。自分が美久の部屋に行った時にしていたように。
「発想は同じだな」
「……誠も同じことをしたの?」
「美久の家に不法侵入した時にね」
美久は微笑んだ。そして目を背けてさみしそうな顔をした。あの頃の二つの自分の部屋は、無くなっている。




