表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
変わっていくもの
91/98

思い出した事

 部活には終業式前日まで休まず出た。事故前の体力には戻せた自信がある。

「最近調子いいよね」

 汗をぬぐいながら政也が声をかけてきた。

「まあな」

「あのさ、ここのところさ、誠はなんか元気なさそうというか、暗かったじゃん?」

「うん、まあ色々と」

 どう説明すればいいか。政也にはあまり嘘を重ねたくない。

「悩みか何かあった? 中学に入った頃とかと同じ感じだったから気になってて」

 それは多分、父が亡くなってすぐの時の事だろうか。

 そういえば――、中学入学時、珍しく政也が強引に部活に誘ってきた。「きっと楽しいよ」、と。そんな風に言って。

 今頃になって気づいた。あれは塞ぎ込む自分を心配して、少しでも気を晴らそうとしてくれてたんだ。

「うまく言えないけど……、吹っ切れたっていうのはあるよ」

 そこから先は何も説明できなかったけど、

「それだったらよかった」

 政也はそう言ってくれた。

 いつか、政也にも打ち明けられるだろうか。




 年が明け、美久が姫路から戻ってきた。

 美久と母が会うのは仕事の都合で明後日になった。

 今日は千夏の家に二人とも招かれている。

 千夏の部屋は自分や美久の発想ではない、かわいらしいキャラクター物のぬいぐるみや、パステルカラーの雑貨やグッズなどで彩られていた。

 三人でテーブルに座ると、全員がお互いの顔を物珍し気に見比べる。

「やっぱり不思議な感じ」

「なんか気持ち悪いな」

「どちらのせいかな」

 口々に感想を言い合った。

「怪我人にかける言葉じゃないね」

「美久も同じ事を思ったんじゃない?」

「だとしても、私はちなっちゃんのようなまだ綺麗な表現の方がいいな」

 千夏はくすくすと笑った。

「三人でおしゃべりするなんて、こんなこと一人のままならできなかったんだから」

 いい笑顔だった。

 病院では他人の目を避けてあまり深い話をしなかったり、二人だけで深刻に話し込んだり、ちゃんとした形でこうやって三人で話せたのは今まで無かった。そもそも美久の意識回復直後は、まだ誠と美久は別の人間だと思われていたから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ