両親との関係
「まあ気を取り直して。それでさ母との面会は、いきなりものすごく謝られたね。なんか昨日は親父にも謝られたし」
杉本さんのお母さんとその知人の方からの話を基にした離婚の経緯としては、見合い結婚の当初から性格の不一致で夫婦仲がさほど良く無かった。それでも杉本さんが産まれてからは会話も増えて一時的に夫婦仲は改善されていた。しかし次第にうまくいかなくなり喧嘩の回数も増加。そんな中母親の浮気が発覚。母親はまだ特別な関係ではなかったと否定していたが、離婚後にその男性と再婚しているのでその点はあまり信用できない、と。
そこから離婚に向けての話し合いと喧嘩の毎日が続いた。
「そこら辺の記憶はあまりないんだよね。じいちゃんの家に預けられることが増えたのと、……やっぱストレスがかかった嫌な事は忘れようとしたからだろうね」
まずいことにそのタイミングで母親の妊娠も発覚し、どっちの子だとかなり険悪な雰囲気に陥ったらしい。これに関しては母親は父親の子だという主張は曲げず、父親側の調査でも浮気相手が職場で知り合った男で、妊娠から逆算した期間にはまだ母親のパート先に異動してきておらず、浮気相手の子の可能性は低いと判断された。
これについては知人の方も、
「産まれた赤ちゃんの顔がね、上の子の赤ちゃんの時とそっくりで、これは兄弟に間違いないわと思ったの」
と言っているとのこと。
ただその辺りが判明するまでに夫婦間の争いはそれ以上に激しくなり、母親は喧嘩の際は手あたり次第に物を投げ、逆に父親はそれにじっと黙って耐えるというパターンが多かった。そしてある日、母親の投げたコップが杉本さんの顔に当たって怪我をさせてしまった。
「一応痕は残ってるけどさ、そんなに目立たないでしょ?」
髪をかき上げておでこの左側の傷跡を見せてくれたけど、確かに注意して見なければ気づかない。こんな風にためらいもなく見せてもらえるのはこの傷に対する捉え方か、自分に対する関係性のどちらが大きいのだろうか。
母親は二人の親権を取ろうとしたが、この一件もあって最終的には杉本さんの親権は父親が勝ち取った。
離婚後は、母親が言うには合わせる顔がないと積極的に面会を依頼しなかった。父親側が言うには遠慮してほしいと断ることがあった。その結果母親と杉本さんがほとんど会うことなく、母親は再婚した相手と共に姫路の近郊に引っ越し、杉本さんは進学と共に姫路で一人暮らしを始めたが、お互い連絡を取っていなかったので昨日まで会う機会はなかった、というのが全容らしい。
父親は成人したらいつか会わせるつもりつもりだったらしいけれど。
「結局母は最後まで謝り通しだったよ。そのせいか歳以上に老けたように見えたな」
そういって杉本さんはため息をついた。
「大変でしたね。会えるなら会うべきだと自分の気持ちを押し付けてそんな思いをさせて、申し訳ないです」
「ん? ……ああ、美久さんが言っていたことだよね……あっ、そうなるんだね。なるほどなるほど……。まあ大変なこともあったけど、良いことも悪いことも含めて何があったのかちゃんと知ることができたし。それに今回の件で、親父の事は相変わらず好きじゃないけど、それでも親父だけのせいで離婚したわけじゃなくて、自分の事を考えてた部分もあるのが分かって、少しは見方が変わったりしたから」
「そう思ってもらえれば」




