別の自分として
帰りの新幹線は今回遅めにした。もう一か所寄るところがある。
姫路城を後にして、道を引き返し叔父さんの喫茶店に行く。昨日、そこで杉本さんと会う約束をしている。今日は結構な距離を歩く事になったな。
城で時間を使ったせいでぎりぎりになった。まだ杉本さんは来ていない。先に一人で入ると「いらっしゃい」と叔父さんに声をかけられ、案内された。
そこはいつもの窓際の席ではなかった。
紅茶を注文してしばらく待つと、杉本さんが入ってきて叔父さんにあいさつしてから店内を見渡した。こちらに一度目を止めたが自信がなさそうだったので、
「杉本さん」
と声をかける。杉本さんは戸惑った顔をしながら同じテーブルに着いた。
「この間はありがとうございました」
「ああ……前も言ったように大したことはしてないから。ええと……、美久さんの身体の方はどう?」
「おかげさまで、来週中には退院できるみたいです」
「それは良かった」
杉本さんは落ち着かなそうにコーヒーを一口飲んでから今日の用件を切り出した。
「昨日も電話で簡単に話したけど、結局母親たちと会うことになって」
「それが今日のお昼でしたっけ」
「そうそう。あっ、その前にちょっと確認しておきたいんだけど」
「何ですか?」
「ええと、君――飯田君と、美久さんが全く同じ人間だったというのは本当かい?」
「証拠は何もないんですけどね」
これからは、余計にそうなってしまうだろう。寂しい気持ちは消えない。
「うーん、そこがねえ、まだ何かしっくり来ないんだよ」
「それは当然ですし、信じにくいという事でしたらそこはこだわらなくていいですよ。美久の親友が、口裏を合わせてちょっとした小芝居をしていると思ってもらっても」
杉本さんは腕組みをして首をかしげた。
「現実にそういうことがあるんだったら……、君に話せば同時に美久さんに伝わるって事?」
「いえそれは、ちょっと違いますね」
杉本さんのが首の角度が更に急になった。杉本さんは美久と誠が同一ではなく、テレパシーのようなもので繋がっていたと捉えているみたいだ。
「普通に、僕に話していただければ、それを後でそのまま美久に伝えますので。あまりその事は意識しなくて大丈夫です」
「そうかあ」
杉本さん自身が言ってないようにしっくり来ないようだ。でも理解しようとはしてくれている。




