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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
旅・故郷
82/98

誠として

 学校にも行ってみる、だけど今日は日曜日だ。弓道部も確か日曜日は休みだった。残念ながら奈良原さんに会う、と言うよりも見つけることは出来無さそうだ。

 いつか会える事があるだろうか。美久との絆が途絶えなければあり得るのでは。――その時は、かつて村山美久でもあったものではなく、美久の友人としてだろうけど。

 活動中の部活はいくつかあったが、学校を一回りしても友達や同級生は見つけられなかった。どうせ話も出来ないけれど。

 学校のグラウンド。あそこで走ってみたら、誠と美久の肉体の違いがよく分かるかもしれない。


 美久の祖父母がこの近くに住んでいたらそこにも行ってみたかったが、残念ながら住んでいるのはここからかなり遠い山口県の下関だ。今回はあきらめよう。


 学校に寄った後、逆方向に引き返して美久のマンションに着いた。

 母は美久の付き添いをしていて、父も今日の夜の便で姫路に帰ってくる予定らしいので今は誰もいない。鍵はキャッシュカードと一緒に借りた。

 引っ越しの準備は遅れがあったものの大体終わっていて、美久も週明けには退院できるので、あとは細かな荷造りをして正月三が日が開けたら埼玉に越してくる予定らしい。だから、これが自分にとって最後の帰宅になる。

 誰にも見られないように注意しながら家に入る。美久の家の匂いがする。普段は気づかなくても間隔が空いているからか感じやすくなっている。玄関、リビング、キッチン……。美久と身長はほぼ変わらないため視点の違いは感じない。電気を点けなかったとしても家具の位置やスイッチの場所まで分かる。とても懐かしい。約20日、これまでの感覚なら10日程度しか経っていないのに。

 自分の部屋の扉を開ける。母が着替えを取り出したせいかタンスがいくつか中途半端に開けられている。しかしそれを除けば記憶に残る部屋の状態のまま。旅行に行くという事で普段よりきれいに片づけている。

 カーテンを開け、ベッドに寝てみる。白い天井、シンプルな照明。横を向くと小さいテーブルと机、その隣に紺色の学校の鞄。殺風景で女の子らしさがないと莉子に言われたことがある。積極的に女の子らしいグッズを集める気にはならず、かといって誠側でも年頃の男の子らしいものを大して置いている訳でもない。部活のユニフォームや、政也から貸してもらったサッカー関連の雑誌ぐらいしかない。女の子でも男の子でも、どちらかの性別を想起させるものは無意識の内に避けていたと思う。

 何度も見たベッドからの部屋の眺め。何千回と繰り返した、美久としてこのベッドから目が覚める情景を思い起こす。

 朝目が覚めて、いつものように美久になっていたら、そういう想像をもう本気でする事は難しい。恐らくこれからずっと、誠として朝を迎える事になるのだろう。

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