決別の旅
気分は全く晴れない。時間が何か解決しているかと期待したが、二日程度では駄目なのか、その兆候はまだない。
それでも病院には一応足を運んでいる。
廊下からベッドの上に座っている美久の姿が見えた。窓側を向いていて表情は分からない。この病室は夕方に近い時間帯になると西日がよく入る。美久は病室から外の景色を見ている事が多かった気がする。気分転換になればと、自分も一緒に窓の外を眺めてみた。
――そうか。
美久に声をかけ、一つお願いをしてみた。
「お金貸して」
「え?」
美久は眉をひそめる。当然の反応だ。でも目的を話せば理解してくれるはず。
「姫路に行きたい」
一瞬美久の動きが止まり、そして、
「分かった」
と、返事があった。
「急だね」
「早い方がいいから」
「そう」
理由を深く聞く事もされず、キャッシュカードを渡してもらった。
帰り際に元気のない美久を励まそうとしたけれど、気の利いた言葉は思いつかなくて、
「リハビリ頑張って」
としか言えなかった。
「毎日親に言われてる」
ぶっきらぼうな返答だが、美久は笑っていた。更に、
「他人事みたいだね」
と。
そして追加でこうも言われた。
「いいね、怪我の無い人は」
「しつこいな」
美久はもう一度にやっと笑った後、
「頑張って」
と背中を押してくれた。
貸してもらったキャッシュカードで美久の口座からお金を引き出す。前回の姫路行きで誠側の貯金はほとんどなくなっているから、仕方ない。暗証番号は知っている。
自分のもう一つの生まれ故郷に行く。
決別の旅になるという予感がした。
それぞれが状況が違っても一生懸命考え、導き出した結論が同じになったなら、それが自分達にとっての答えだ。たとえ正解じゃなくても、自分達で選んだ道だ。




