理解者
それでも家族以外に、ただの妄想と思われないよう、自分の話ではないとか夢の話とか、予防線を張りながら分かってくれる人がいないか探り続けた。だけど実際にそういった話をした時に返ってくる反応は、芳しくない物ばかりだった。空想がちな子供と思われていたのもある上に、突飛な話でもあるからだろう。同年代の友達に話をした時の反応は大抵ひどい物だった。何を言っているか理解できないということが大半で、嘘つき呼ばわりされるのも少なくなった。一通りの人間に話をした頃には自然と、誰にも伝えることのない自分達だけの秘密になってしまった。
唯一その話の一部でも理解してくれたのは美久の小さい頃の友達、千夏だけだった。
どこまで記憶が確かかはわからないけれど、覚えているのは砂場で二人で遊んでいる時に、自分の秘密を怖々と伝えていたこと。千夏とは親同士が知り合いということもあり仲が良かった分、逆に否定されることが嫌で言わないようにしていたけれど、その時は――、そうだ、クリニックに連れていかれるようになって精神的に弱っていた頃だった。
砂場に絵を描きながら、みんなには自分が一人しかいないけれど、自分の場合はそれが二人いると説明した。千夏はきょとんとした顔をして、大きな目でこちらを見つめ、それから「すごいねー!」と笑ってくれた。
「みくちゃんがふたりいるの?」
と質問が出たので、もう一人の自分は誠という男の子で、自分と同じだけど姿かたちは違うことや、遠い埼玉に住んでいることを話した。説明すればするほど千夏の質問は増えていき、誠はどんな男の子なのか、何が好きなのか、誠の家族や友達についてや、千夏がよく知らない埼玉の街についてなどを話すと楽しそうに、時には驚きながら聞いてくれた。
「すごいんだねみくちゃんは。みくちゃんじゃないなまえがあって、べつのとこにもみくちゃんがいるんだね」
今思えばたどたどしい説明で、幼稚園に通っていたような子供にとって理解するのが難しいと思っていただけに、素直にそのまま受け止めてもらえるとは想像もしていなかった。
「ちなっちゃん、信じてくれるの?」
千夏は首をかしげてこう言った。
「よくわかんないけど、みくちゃんがいうんだからほんとなんでしょ? よくわかんないけど」
全てを分かってもらえたわけではないけれど、少なくとも千夏は、自分のことを信じてくれた。




