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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
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中途半端な奴

 ふと、この前見た三人の夢に思い至った。あれは夢かもしれないけど、現状に対する自分の考えの具現化という風に捉えることもできる。美久だったらどういう解釈をするんだろうか。かいつまんで美久に夢の内容を説明してみた。

「唐突で悪いけど、気になってて。自分のどういう意識が反映されているのか、一つのヒントになるかもしれなくて。美久は同じようなものを見たことある?」

「それ自体は見ていない。ただ、似たような夢か何かはあったと思う。思索をしていくと、考え方やその傾向は似通っているから不思議ではないけど。多分詳細は違うから、誠の見たものを基に推測してみるね」

 夢という、他人のものであるならばほとんど伝わらないはずが、美久になら少しは分かってもらえると思うのは希望的観測だろうか。

「あのイメージが表しているものは何か、『中途半端な奴』という言葉は自分に向けてだということは確実だけど。ただそれを誰が言ったのかがよく分からない。完全な自分が言ったのなら、急に分離してしまった自我の中途半端な二人に向けてとも取れるし、逆に完全な自分と思っている相手に言ったのなら、今までの自分達が間違った、無理やり一人、もしくは二人の枠に収められた存在だったと言っていると取れる」

 美久なら、過去の完全な自分が未練を断ち切るように言ったと解釈するのでは。

 美久は首をかしげてこう言った。

「それって、視点は誰の視点なの? 完全な自分と、誠か美久の内、どれか二人が見えるなら分かる。でも誠の話の通りなら三人とも見えているんだよね」

「あっ」

 見落としていた。言葉に気を取られていた。

「そうか。だったら――それを見ている自分は、美久でも誠でも、当然完全な自分でもない。そのどれでもないその他――チリでも空気でも何でもいい。……馬鹿みたいだね。本当に半端ものだ」

 不鮮明な夢のようだったイメージが明確になってきた。あの言葉は一人だけの発言とは限らない。完全な自分に対する発言なら美久と誠が同じ立場で発してもおかしくない。しかし今固まったイメージの中では、完全な一人も、美久と誠の両者も、何者にもなれていない自分に対して、全員でその言葉を送り付けている。

 体の力が抜ける。どこか納得してしまった。ただの勝手な解釈だけど、何も証拠がないのにそう思うのは、自分の中で曖昧だった感情を明確化出来たからなんだろう。

「……思い出した」

 つぶやいた後、美久はしまったというような顔をして手で口を覆った。

「……何?」

「別に、今話すような事じゃないんだけどね」

「いいよ、教えて」

「大丈夫?」

 不吉な言葉にうなずくと、美久は語りだした。

「自分も似たような夢を見ていたかもしれない。自分が見た夢では、場所は同じように薄暗い部屋。自分と誠が両手をつなごうとして、片手、自分にとっては右手を誠と直接繋ぐ事は出来たけど、左手は間に誰かが挟まってしまった。誠の夢から考えると完全な自分辺りだろうね。その人がいつの間にか消え、左手も無事誠と手を繋げた。そういう夢」

 それは確立した美久視点での、過去の自分への決別を思わせるイメージ。目の前にいる、美久である自分はもう、美久一人として自分を認識している。美久でも誠でもあった存在の延長ではなくて。

 ――認めるしかない。

「美久がもし、こちらの夢に入ったとしたら、完全な一人と、誠の二人だけが見えそう?」

「現状がそうなっているのだから……、そうなっていくんだろうね」

 美久は美久一人として生きていくんだね、と問いかけそうになったけど、それをはっきり口にする事は出来なかった。

 自分はどうなる――?

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