共通の友人
週明け、月曜の学校の昼休み、千夏が訪ねてきて今日は一緒にお見舞いに行こうと言われた。タイミングが合えば今までも一緒に行くことはあったが、そうやって約束することはなかった。
帰り道は朝と同じく、風がなくても寒かった。千夏は暖かそうなチェックのマフラーをしていた。
「あのね」
案の定、千夏から話があるようだった。
「最近元気ないよね、二人共」
「ああ、そうだね」
二人――。
「元気がないし、それに何だか辛そう。……やっぱり、二人が同じ人でなくなっちゃったから?」
答えられず、うつむいてしまう。
「事故の後、みくちゃんだけでなく誠君まで落ち込んでたから。事故の後に二人に分かれてしまったんだよね?」
「……うん」
あの時から、全てが変わってしまった。
「私にはね、この前話してもらった二人の不思議な関係はまだよく分からないの。今でも、目の前の誠君がみくちゃんと同じだったなんて頭では理解したつもりでも、なんだか信じられない。すごく似てても、みくちゃんを見たらみくちゃんに、誠君を見たら誠君にしか見えなくなっちゃう」
「きっと、みんなそうだろうね。自分だってそう思うから」
千夏は足を止めてこちらに向き直った。
「でも、みくちゃんと誠君が同じ一人でも、違う二人でも変わらない。私はどちらからも困ってる時に助けてもらった。だから、二人の力になりたいの」
不意に幼い頃の事を思い出した。あの砂場、みくちゃんがいうんだからほんとうなんでしょ、と無邪気に言ってくれた千夏の姿を。
「……自分は、この誠の方では何もしてないよ」
「こっちの学校で嫌がらせされた時も、何度も会いに来てくれたり、みくちゃんと文通できるようにしてくれたりして、新しい場所で一人じゃないと勇気をもらったよ」
「――大したことはしてない。自分の為の行動でもあったから」
「それでも嬉しかった。自分の為だったっていうんだったら、私の為に二人を支えたいの」
「……ありがとう」
千夏は一人の時に自分達二人と関係のあった唯一の存在だ。そして二人に寄り添ってくれている。
そんな千夏にだからこそ、こんなことを聞いてしまった。
「自分達は――、美久と誠はうまくいっていない。自分達はこれからどうしたらいいんだろう?」
千夏は元々大きい目を見開いて驚きの声を上げ、うーん、と考え込んでからこう言った。
「喧嘩してるんだったら、一度しっかりと自分達で話し合ってみたらどうかな?」
千夏はサラッと言ってのける。拍子抜けで体の力が抜けてしまったけど、案外それが正解なのだろうか。
これまでの話し合いは何のためにやってきたのか。思っていることを、意見を本気で戦わせるべきだったのでは? でもそれは無意識のうちに避けていたかもしれない。同じであるはずの自分達の差異を強く感じてしまうから、相手に合わせた発言にしてしまっていたのかもしれない。
「今の自分には、もう美久側の考えが分からなくなってきた。それでも話すべきかな」
「みくちゃんも悩んでいるよ。誠君と最近話せてないって言っていたから」
「そうなの?」
考えてもいなかった。こちらの先を行っていると思っている美久の気持ちなんて。




