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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
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他人のようだ

 もう全く違ってしまっているのか? 近くにていも、別の場所で生きている。別々の時間が増えてきている。もう違う人間なのだから――。

 自分、ではなく美久と呼ぶ。便宜上そうやって呼び分けているだけ……、そのはずだった。それが徐々にその命を、その存在を表す言葉になってきている。

 ――そういうことなのか。美久が言っていたように、それぞれの人生がある。かつて自分であってもそれは過去のものになっていく。心のどこかでそれを感じ始めていく。

 美久はそれが分かっていたのか。




 体が重い。何もする気力がない。

 ただ毎日起きてご飯を食べ、学校に行き、眠る。

 ここ数日美久の見舞いに行っていない。行かなければいけないのに。

 自分が一人しかいなくなる。それが絶望にしか思えない。

 昨日は夢を見た。場所は美久か誠の部屋。いや両方かもしれない。夢特有の辻褄の合わない風景、両方が組み合わさったような薄暗い部屋。既視感は少しだけあった。

 そこに誠の自分がいて、美久の自分もいる。でも奥にもう一人いる。もう一人はどういう顔かはっきりと見えない。女にも男にも見える。どこか美久や誠の面影がある。どちらでもあってどちらでもない、元の完全な自分なのか? だけど光が足りず判別できない。よく見ると美久の顔も誠の顔ですらもはっきり見えていなかった。

 「中途半端な奴だ」という声が聞こえた。誰が言ったのか? もう一人の、完全体の自分が言ったのか?

 ああ、頭がおかしくなりそうだ。




 今日の手紙には、莉子が明日急遽やって来ると書いてあった。

 もともと年末年始には、祖父母の家がある埼玉に一家でこちらに来る習慣になっていたので、わがままを言って予定を早めてもらったそうだ。

 そういえば、

「めんどくさいんだけどねー、年末年始強制的にだし、そのせいで友達と初詣行ったこともないしー。ま、行かないとお年玉もらえないから行くしかないんだけどね。それにおじいちゃんもおばあちゃんも一応喜んでくれるからさー」

 と言っていたことを思い出した。

 懐かしい。半月程度しか経ってないのにそう思ってしまった。

 そうだ、以前の自分の体感なら一週間しか日付は進んでないぐらいだ。

 これから、美久側の友人に会う機会は人生で何回あるだろう。




 返事をする時間はなかったが、美久の想定の範囲内のはず。翌日、莉子が到着しそうな頃より早めに病室を訪れる。窓の外を見ていた美久に声をかけ、椅子に腰かけて莉子を待つ。

 空気が重い。運良くか運悪くか他に見舞いの人間はいなかったが、お互い中々口を開かない。電話では莉子がどんな様子だったか聞いて、いつも通り、という返事が来た頃に莉子が半泣きで病室に入ってきた。

「大丈夫ー? 足治った? すぐ来れなくてごめんねーー!」

「莉子、声が大きいよ。……心配してくれてありがとう」

 そう言って美久は近づいてきた莉子の頭をなでて、次第に出てきた鼻水用にBOXティッシュを渡してあげた。ああ、変わってないな。

 自分も莉子と再会を喜びたかった。だけど発せた言葉は、

「大丈夫ですか?」

 という他人行儀な言葉だけだった。

 莉子が多少落ち着いた後、美久の知り合いとして簡単に紹介され、部外者の誠の自分は席を外した。

 誠の自分は赤の他人。泣いていた莉子を慰めることも出来ない。


 家に帰ると、以前に見た三人の夢を思い出した。何か潜在意識が反映されているのか。意味はあるのか。

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