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『自分』
結局何が理想だったのだろう。
今は千夏という理解者がいる。とても大きな進歩だ。これで別々になっていなければ――。
そうなのか? 理解者さえいれば2つの一人でも良かったのか? それが理想なのか……? あの歪な形が。
でも、それに戻りたいと強く願っている。
千夏はまだ病室にいた。残っていた理由は聞かなかった。話が長くなりそうだから先に帰るよう言っておけばよかった。
「誠君大丈夫? 疲れてるのかな。しんどそうな顔をしてるよ」
「大丈夫……」
千夏はどんな風に受け入れているんだろう。友人の事故、不可思議な悩み、友人の分裂という状態……。
美久が横になるのに千夏が手を貸したけど、自分はためらった。横になった美久は疲労の色が見える。
自分たちが一つではなかったと本気で疑うような場面が、美久の方にはあったのだろうか。もしそうだったとしても、自分には分からない。完全な一つではなかったら共有されない部分があるのだから。
物体や情報ではなく意志の共有――それは一つの自分だったら起こらない概念だ。
自分が、完全に分離していってしまう。
その夜、事故以来初めて泣いた。
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