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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
半分
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誠の『自分』、美久の『自分』

 それから家族に関する事も聞いた。父は容体が安定してから一旦姫路に戻って仕事に復帰しているらしい。距離が空いて以来毎日メールが来ている。電話は病室でできず、体の負担がかかるので我慢しているからだと。美久の携帯はやはり壊れているので、現在は母の携帯を借りてのやり取りだそうだ。

 杉本さんの件は折を見て連絡することが決まった。お礼と、杉本さんの家族についての経過も知りたいし、携帯の修理状況によっては誠側の自分から電話することになった。

 こちらからは千夏がずっと心配していた事や、事故後の誠への切り替わりから最初の面会までと、千夏と杉本さんに秘密を伝えた経緯を説明した。

 美久はいつ切り替わりが途切れたことに気づいたのか尋ねると、

「事故後の3日目で気づいた」

 という返答が来た。

 実は事故の翌日の時点で美久はわずかに意識を取り戻す瞬間があったらしい。しかし周囲には誰もおらず、意識ももうろうとしていてほとんど天井を眺めるだけで終わり、誰にも気づかれなかった。2日目に目覚めた時は発見してもらえ、自分が事故に会ったことと自分の体の状態、そして丸2日眠ったままだったことなどを教えてもらったという。

「その時に天井が、その前に見た時と変わっていて、前日まで別の部屋にいたことを知って、前日にも意識を取り戻していたことが分かったの。2日目は短時間の覚醒だけだったので余裕もなく、自由に体を動かすこともできなかったから、誠になれば状況が分かるはずという希望だけ持っていた。ただ、美久側での目覚めが3連続になっていることに不安はあった」

「事故後にすぐ誠に切り替わった。その記憶はないんだね」

「残念だけどね」

 ゆっくりと美久は首を振る。

「そして3日目。誠と千夏に会えた日だね。美久のままの状態が連続して、完全に異変に気付いたけど何もできない。記憶が保持できないような何らかの脳の障害も疑ったけど、先生からは強い衝撃を受けてはいるけれど、CTなどで大きな問題は診られないので注意深く観察していくしかない、とはっきりしたことは分からなかった」

 ……自分はそこまで思い至らなかった。

「精神は肉体と無関係じゃない。相互に影響を受けるはずだから事故と怪我で混乱している美久側でなく、無傷で冷静な誠側から確認を取りたかった。――まだこの時点では誠側での記憶だけが残らなくなっている状態だとか、わずかな希望にすがっていた。でも誠からメモが返ってきて全てを把握したよ。一時は絶望的な気分になったけど、それを受け入れるしかなかった」

 改めて思う。傷ついた体で情報も収集できずに緊急事態が発覚し、自分自身の現状に大きな転換があったにしては、美久は随分と落ち着いていた。自分が同じ立場ならそう出来るだろうか?

 美久に尋ねてみると、

「寝るか考えるかしかする事がなかったから、今ではもう自分の方が若干冷静に考えられているはずじゃないかな。思考は多少なりとも先に進んでいるだろうね。千夏や杉本さんに打ち明けた件に関しても何となく予想していたから、思った以上にすぐで、結果的に良い方向に行っただけとは言え、どうなったとしても狼狽しないぐらいには心の準備をしていた」

 目の前の美久は冷静というよりも冷たい、何かをあきらめたような生気のない目をしている。気のせいだろうか。

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