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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
半分
65/98

別々になった『自分』

 美久の携帯はやはり繋がらない。これまでと同じ現象だと思うけど、今なら単に事故の時の衝撃で壊れてしまった可能性もある。事故直後の通話が最後の灯火だったのか――。そういえば、杉本さんの抱えていた問題はどうなったのだろう。




 この状況は一時的なものであってほしいという気持ちに反して、誠の日々は続く。それでも少しずつ慣れてはきた。美久側で目覚めるということが、絶対にあってほしいという気持ちから、そういう願いが叶えば、というぐらいになってしまっている。

 寝ている間に見る夢の中に、美久側で見ている夢が混ざっているということはないのだろうか。しかしそれを判別する術はない。夢の基になる現実や思考は、つい最近まで同一だったから。



 学校が終わってからまっすぐ病院へ向かう。

 ベッドの上から物憂げに外を眺めている美久に声をかけるが、当然元気はない。

「気分転換しよう」

 すぐ後に来た千夏の提案という形で美久を病室から連れ出す。車いすに乗った美久を千夏が押してくれた。

 自動販売機や公衆電話のある一角で、他に人がいない場所があったのでそこに連れていく。

「あとは若い二人で、どうぞごゆっくり」

 千夏がどこで覚えたのか年寄りじみた冗談を言った後、

「大丈夫?」

 と、自分達を見てそう言った。

 自分だけでなく美久の顔色もよくはない。経過は順調ということだったけど。


 千夏の足音が遠ざかっていく。どちらも口を中々開かなかった。

 少しずつ良くなってきてはいても残っている美久の顔のあざや、しっかりと固められた左足のギブスを眺めながら言葉を探す。

「調子はどう?」

 意を決して切り出す。

「気分は良くない。千夏や、両親を安心させるために暗い顔をしていられないけど、本当はショックが相当ある」

「……2つになったこと?」

「二人に分かれてしまった事と事故と……両方」

 美久は左足をさすった。

「そっか」

「怪我は焦らず治していくしかない。そして二人になったことも……、受け入れようとはしている」

 受け入れる……、か。きっと、受け入れなければならないんだろう

 もう一人の自分である美久とこうして顔を合わせ、会話をする。現実のものでは無いように思える。美久側でもそうだろう。自分と自分が会話をしている違和感、この数日でわずかには慣れてきたけど、しかしこうして二人だけでじっくり話すとぎこちない感じになる。思った以上に言いたいことを言えない。二人の会話は自問自答とも言える。お互いに発言しながら考えをまとめていくようなものになる。再び沈黙が訪れた後、一旦身の回りのことの情報交換をしていく。

「手は大丈夫?」

「手は別に問題ないかな。最初の方はメモ書くのも体力的に大変だっただけで、打撲で痛む以外は特に支障はない」

「足は……」

 聞いていいものか迷ったけど、聞くべきだと思った。

「治る?」

「足、元には戻らないらしい」

 美久ははっきりと答えた。

「リハビリはこれからだけど、先生の見立てでは歩くのはともかく激しいスポーツは厳しそうだった。まあもともと美久の体の方でスポーツに打ち込む予定はなかったから、そんなに影響はないかもね。足以外はそういう障害はなさそうで、日に日に良くなっている。……それと、千夏にはこの件はまだ話していない」

 自分自身が知るのは問題ないけれど、人に話すのは簡単にはいかない、ということか。美久の足をさすってみるが、その痛みや不自由さを知ることは出来ない、今の自分には。それがとても歯がゆかった。

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