どちらも『自分』
「私は……、一回みくちゃんに確認させて欲しい。でも村山君が言ってることは本当かもしれないと思います」
「え?」
驚いて、伏せていた顔を上げて千夏を見る。
「信じられないような話ばかりだけど、まるっきりの嘘をこんなところで言ってはこないと思いますし、村山君はそんな人じゃないです」
「だけどさ、俺も嘘とかでたらめとかじゃないと思うけど、ちょっと混乱しているんじゃ……。それか何かの例え話みたいなものなんじゃないかな」
杉本さんの話を遮るように千夏は反論する。
「私は小さい頃に一度、同じような話をみくちゃんから聞いているんです。いつも私を助けてくれてた強いみくちゃんが、泣きながら教えてくれたんです」
千夏はあの時の事を、今でも覚えていてくれてたんだ。
涙が、目からこぼれてきたのを指先でそっとぬぐう。
「でもごめんね、まだどこまで本当か分からないし、だから一度みくちゃんからも話を聞いてみたいの。あれ? みくちゃんも村山君なんだよね」
「うん」
「よく分かんなくなってきちゃった。話してくれたことが合っているかどうかぜんぜん分かんない。だけど――、もし本当ならみくちゃんと村山君の力になりたい」
千夏の言葉に、今度は手のひらを使って両目を覆わなければならなくなった。
そして自分の気持ちを素直に伝えた。
「ありがとう。……ちなっちゃん、長い間、秘密にしていてごめん」
「ううん。……村山君がみくちゃんだとしたら、幼稚園の時に言ってくれてたよね」
「でもその後隠していた。小学生の頃に会った時も」
「謝らないでよ。秘密にしなきゃいけない事情か何かがあったんだよね? 信じてもらいにくい話だし」
千夏の手が伸び、両手でこちらの手を覆ってきた。少し冷たい、小さい頃以来に触れた千夏の手。千夏は成長し、自分は美久ではなく誠の体だから全く違う感覚のはずだけど、とても懐かしい。
「……明日、また美久と話してみて」
「うん、話してみる」
千夏の斜め後ろで、杉本さんが腕組みをしながら立ち続けていた。
6時近くになり、遅くなるといけないので千夏には先に帰ってもらい、杉本さんともう少しだけ話をすることになった。
「杉本さん、とても現実的な話ではないですし、信じるのが難しいと思います」
「そ、そうだね。やっぱり現実感がないし……、二人が同じだって証明するものとかってのはある?」
「ないですね。残念ですけど」
何もない。自分の記憶しかない。すでにもう、同じではなくなってるかもしれない。
「自分に、杉本さんと美久が話したことを聞いてもらえば、記憶の限りそれを答えることは出来ます。もちろん、事前に口裏合わせしたと思われたら否定はできませんので、完全な証明にはならないですけど」
「何ていうか……、頭が追い付かないよ。例えばさ、その現象にちゃんとした何か科学的な名前があったり、原因がはっきりしてたら、原理が理解できなくても想像は出来そうなんだけど……」
「いいですよ。思春期の人間のよくある空想や妄想の一種と思ってもらったり、……そうですね、自分と美久が特別な繋がりがあるとだけでも捉えてもらえば」
杉本さんは頭を抱えてしまった。
「あまり深刻に考えないでください」
「そうなんだけどさあ」
信じてもらえないことには慣れている。辛くないといえば嘘だけど。でも信じられないのであればただの妄想として、自分の事なんかに悩まないでほしい。




