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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
半分
63/98

どちらも『自分』

「私は……、一回みくちゃんに確認させて欲しい。でも村山君が言ってることは本当かもしれないと思います」

「え?」

 驚いて、伏せていた顔を上げて千夏を見る。

「信じられないような話ばかりだけど、まるっきりの嘘をこんなところで言ってはこないと思いますし、村山君はそんな人じゃないです」

「だけどさ、俺も嘘とかでたらめとかじゃないと思うけど、ちょっと混乱しているんじゃ……。それか何かの例え話みたいなものなんじゃないかな」

 杉本さんの話を遮るように千夏は反論する。

「私は小さい頃に一度、同じような話をみくちゃんから聞いているんです。いつも私を助けてくれてた強いみくちゃんが、泣きながら教えてくれたんです」

 千夏はあの時の事を、今でも覚えていてくれてたんだ。

 涙が、目からこぼれてきたのを指先でそっとぬぐう。

「でもごめんね、まだどこまで本当か分からないし、だから一度みくちゃんからも話を聞いてみたいの。あれ? みくちゃんも村山君なんだよね」

「うん」

「よく分かんなくなってきちゃった。話してくれたことが合っているかどうかぜんぜん分かんない。だけど――、もし本当ならみくちゃんと村山君の力になりたい」

 千夏の言葉に、今度は手のひらを使って両目を覆わなければならなくなった。

 そして自分の気持ちを素直に伝えた。

「ありがとう。……ちなっちゃん、長い間、秘密にしていてごめん」

「ううん。……村山君がみくちゃんだとしたら、幼稚園の時に言ってくれてたよね」

「でもその後隠していた。小学生の頃に会った時も」

「謝らないでよ。秘密にしなきゃいけない事情か何かがあったんだよね? 信じてもらいにくい話だし」

 千夏の手が伸び、両手でこちらの手を覆ってきた。少し冷たい、小さい頃以来に触れた千夏の手。千夏は成長し、自分は美久ではなく誠の体だから全く違う感覚のはずだけど、とても懐かしい。

「……明日、また美久と話してみて」

「うん、話してみる」

 千夏の斜め後ろで、杉本さんが腕組みをしながら立ち続けていた。


 6時近くになり、遅くなるといけないので千夏には先に帰ってもらい、杉本さんともう少しだけ話をすることになった。

「杉本さん、とても現実的な話ではないですし、信じるのが難しいと思います」

「そ、そうだね。やっぱり現実感がないし……、二人が同じだって証明するものとかってのはある?」

「ないですね。残念ですけど」

 何もない。自分の記憶しかない。すでにもう、同じではなくなってるかもしれない。

「自分に、杉本さんと美久が話したことを聞いてもらえば、記憶の限りそれを答えることは出来ます。もちろん、事前に口裏合わせしたと思われたら否定はできませんので、完全な証明にはならないですけど」

「何ていうか……、頭が追い付かないよ。例えばさ、その現象にちゃんとした何か科学的な名前があったり、原因がはっきりしてたら、原理が理解できなくても想像は出来そうなんだけど……」

「いいですよ。思春期の人間のよくある空想や妄想の一種と思ってもらったり、……そうですね、自分と美久が特別な繋がりがあるとだけでも捉えてもらえば」

 杉本さんは頭を抱えてしまった。

「あまり深刻に考えないでください」

「そうなんだけどさあ」

 信じてもらえないことには慣れている。辛くないといえば嘘だけど。でも信じられないのであればただの妄想として、自分の事なんかに悩まないでほしい。

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