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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
半分
62/98

『もう一人の自分』

 一心不乱にメモを書き終えると美久の病室へ急ぐ。残念なことに美久は眠っていた。

 仕方がない。無理をさせることは出来ない。そう自分に言い聞かせて直接の会話はあきらめた。どちらにしろ母がいる以上、メモを渡すだけになるのは変わらない。母に適当な理由を伝える。

「すみません、何度も。伝え忘れてたことがあったので手紙を書いておきました。ここに置いておくので、起きた時にでも見てもらって下さい」

 細かくたたんで分かり辛くしたとは言え、美久が書いていたのと同じメモ用紙であることに不審を抱かれないだろうか。母は意外と細かい所には注意を払わない性格なのは知っているので、大丈夫だとは思うけど。

 その時になって、メモの作成に妨害が挟まれなかったのに気づいた。これまで電話でもメールでも一切自分同士が繋がる事は成立しなかったのに。

「何か大事な用でもあったの?」

 病室の前まで千夏がついてきていた。更に杉本さんもこちらに向かってきている。

「そんなに動いて大丈夫かい?」

「ええ。もうほとんど元通りなので」

「そっか。一つ聞きたいんだけど、君って事故の日に美久さんの代わりに電話に出た子だよね?」

 何を、聞かれるのだろうか。平静を装って答える。

「そう……です」

「ええっと、美久さんと君は何かあるのかな? 美久さんの事をよく知ってるし、俺と話してた内容まで。さっきもただの知り合いじゃなく、なんと言うか特別な関係のように見えたけど」

 確かに一連の行動はただの知り合いとしては不自然な点もあるだろう。

「それに、俺は普段は兵庫県の姫路に住んでるんだけど、そこで君に似た子を見たことがあるんだ」

 あの時か。もしかしたらと思っていたけど、美久に会いに姫路に行った時にやはり目撃されていたのか。

「君と美久さんはどういう関係なんだ? 美久さんが言っていた『もう一人の自分』というのは――」

「それは――」

「私も聞きたい」

 真剣な顔で千夏がこちらを見てきた。

「みくちゃんと誠君は去年SNSで知り合っただけで、実際には会ったことがないはずなんだよね。でもそんな風には思えない。まるで、家族とか兄弟みたいにお互いを大事に思っているように感じるの。みくちゃんが最初に呼んだのも村山君だった。事故の日も、どうしてあんなに早く事故があったってわかったの? 誰から連絡があったの?」

 二人の質問にどう答えるべきか必死で考える。

「それに、村山君と一緒にいると、みくちゃんと一緒にいるみたいに感じる。今日みくちゃんと話をしてよけいにそう思った」

 ああ――、千夏はそこまでわかってきているんだ。

 うん、そうだ……。これからしばらく美久は自由に行動できないし、自由に会話もし辛いから協力してくれる人はいる。うまいごまかし方もとっさに出てきそうにない。……いや、そうじゃない。一番大事なこと。千夏は自分たちに向き合おうとしてくれている。

 ゆっくりと、何年も秘密にしていた事を伝えた。

「自分は、自分と美久は全く同じ一人の人間なんだ」


 それから、生まれてからずっと自分が二人であったこと、村山美久と飯田誠が一つであったこと、だけど今回の事故で別々の人間になってしまった可能性があることを説明した。そして、ずっとそれを話せなかったことを謝った。

 話を聞いた二人は明らかに戸惑っていた。特に杉本さんの方は難しい顔をしている。不信の目。覚悟はしていた。

「それって、いつだったか話してくれたSF小説の設定だったよね。そんなのって、あくまでも空想の世界の話だよね? そうだよね?」

 当然の反応。みぞおちの辺りがきゅっと痛む。千夏は――、

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