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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
誕生と異常
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気づき

 それ以外にも「ここにはいないけどむこうでは」、「ねないとあえない」、「もうひとりのほうの」、「みくだけじゃなくてまことも」、などと言っていたことはぼんやりと覚えている。

 美久の時には誠の父や母や誠の友達の話をしても誰も分かってくれない。それは誠の時に、美久の周りの人間の話をした場合も同じだ。一体誰の話をしているのか。作り話か空想か、言葉の意味をまだよく分かっていないのではと、実際に体験したこととは信じてもらえなかった。

 それだけならまだ、美久側と誠側の人間が出会ってないからだと思うことは出来た。しかし自分自身が二つの人生を送り、二つの姿を持ち、二つの場所で生活をしていることも理解してもらえない。どうして分かってくれない、ともどかしかった。多少同年代の子より知能があると言っても、学校にも通っていないような子供のつたない言葉ではこの特殊な状態をうまく説明できなかった。


 混乱することも多かった。自分が――例えば誠がプレゼントされたお気に入りの手袋が、美久になった時には手元になかった。それを当たり前と受け入れられるようになるまでは、無くなったと思って一生懸命探していた。傍から見れば渡したことも見たこともないはずのものを探し続ける奇行だっただろう。

 これについては美久と誠では住む家も、街も、周囲の人間も完全に入れ替わることから、様々な物がそれらに紐づいていて、反対側の物はどうやっても手にすることが出来ない、というように理解をしていった。癇癪を起しそうになっても、これは抗えないものだと我慢するようになった。


 そうして自分自身の特殊な形を、成長に伴って次第に理解していった。理解の助けになったのは絵本に加え、幼稚園入園前後に接したマンガやアニメ、映画などだった。当たり前の、自分が一人しかいない登場人物たちがそこにいて、それが普通だと、まともな人間なのだと気づき始めた。――自分以外の誰もこの状態を分かってくれないと言うことも同時に。

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