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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
半分
59/98

『自分』の復活・継続

 その夜、千夏から電話がかかってきた。千夏の声は弾んでいる。

「美久ちゃんの意識が戻ったって!」

 これ以上ないほど嬉しい知らせだった。

 美久の両親から千夏に先ほど連絡が入ったらしい。意識を取り戻したのは短時間だけど、受け答えはでき、事故にあったことも認識していたと。それは当然だ。

「良かったね! 良かったね!」

「うん。良かった……。良かった」

 二人とも同じような言葉しか繰り返していなかった。

 明日一緒に面会に行くことを約束して電話を切った後も興奮は収まらず、同時に強い安堵感も覚えた。不思議な気分だ。他者としての回復の喜びと、自分としての生還の嬉しさが同時に来るとこんな気持ちになるんだ。

 こうなれば後はもう美久として次の今日を迎えられるはずだ。あの大怪我ならかなりの苦痛があるだろうからそれだけは不安だけど。意識がぼんやりしていることで、少しでも痛みが和らいでくれることに期待しよう。

 美久の回復に時間がかかるなら身の回りのサポートは誠がするのが最適だけど、周囲をどう納得させればいいか。いや、その前にまずは意識のはっきりした状態で自分達が会わなければ――そこに考えが至って、急に不安が襲ってきた。

 まだ状態が安定しないうちに自分同士で会うのは得策ではないのでは? 意識を取り戻した完全な状態での対面はまだ経験がないし、今までのように何らかの妨害が入る可能性も高い。少なくとも誠が面会に行った時間だけ美久が眠りに入ったり、場合によっては昏睡状態に戻ってもおかしくない。千夏だけ先に面会してもらって、容体に問題がなさそうか確認してもらってから自分も会おうか。自分が出ていくとなった途端に意識を失うという不自然な、大雑把な辻褄合わせが行われないことに期待して。

 もし会えたらどのような形になるのだろう。少なくとも今日の美久がどんな行動をしたのかはもう知ってしまっている。美久になった時はやはりその記憶は抜け落ちてしまうのか。

 精神的に高ぶった今では考えがまとまりそうもない。美久の時か、美久の体調的に難しければ明日、面会時間までになんとか対策を考えよう。



 希望に満ちた目覚めで、最初に認識できたのは誠の部屋の天井だった。

 美久に切り替わってない。

 なぜ? どうして? 必死で記憶を辿ろうとするけど、入院している美久の状態での記憶は欠片もない。残っていないというよりもそもそも存在してないようにすら感じる。

 おかしい。美久の意識は昨日戻ったはずなのに、状況に変化はなく誠側のままだ。これで事故のあった日を含めなくても三日間は誠側からの日が続いている。こんなことは今までに一度もない。

 今までの二日連続になった場合も、二回目の今日を過ごした側が翌日も連続しているパターンだけだった。例えば一日目が美久で始まってから誠側に切り替わった後、二日目に続けて誠側で始まった後に美久側の二日目が始まる。一日目の美久の後に誠側に切り替わらず、二日目の美久が始まるなんてことはない。このパターンだと二日目の美久の後に一日目の誠へと、日付をまたいで逆行することになるけど、そんな事が起こることは一度もなかった。

 オセロの石の様にどちらが上か下か、先か後か一日単位で入れ替わるだけで、石が上下分割されてバラバラになるようなことはなかった。必ず二人分の1日が終わってから翌日になる。ただ、美久が意識不明の日はそういった計算から省いて考えてきた。意識がないのであれば切り替わっていてもそれを知覚できない可能性が高いから。しかし今は、美久側でも目覚めている。だとしたら昨日――12月3日の意識を取り戻していた美久の1日が飛ばされている。

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