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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
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『自分』との対面・抜け殻の『自分』



 翌朝も、自分はまた誠のままで目が覚めた。

 12月1日の誠側での目覚めと美久の事故があった後、12月3日の今日まで連続で誠の朝を迎えてしまっている。美久側での目覚めは一度もない。就寝前の祈りなどなんにもならない。病院のベッドで目覚めることを思い描いても、その夢さえも見れていない。

 事故当日に日中での入れ替わりというイレギュラーがあって、その日を美久から始まる日と仮定すれば、二日連続で誠か美久の一日が連続しているだけと捉えることもできる。二日連続自体は今までもあった。しかしそう考えて無理やり納得しようとしても、焦燥に駆られるのは変わらない。

 美久の意識が戻らなければ、これが続いて行ってしまう。


 千夏の部屋は一般病棟に移っていた。状態はある程度安定はしてきたそうだ。つまり、美久に会えるというのだ。それを理解して急に緊張感が襲ってきた。

 病室の前で先に来ていたらしい千夏と会った。昨日や一昨日より落ち着いているようだけど、目は赤いままだ。

「まだ、目を覚ましてくれないみたい」

「そう」

 千夏の小さな声と変わらないぐらい弱弱しい声が出た。

 千夏に続いて病室に入る時に一瞬躊躇した。ついに、この先に行けば、念願かなって自分同士が会えるのだ。こんな形は望んではいなかったけど――。

 ゆっくりと歩を進めると、初めて会う見慣れた美久の顔が見えた。

 横たわって目を閉じているせいか印象は少しだけ違う。そうか、こうして目を閉じた状態の自分の顔を見るなんてこれまでは物理的にできなかったんだ。今自分は、鏡や写真越しではなく直接自分の顔を見ている。

「こんにちは」

 母にあいさつされ、自分が美久にしか目がいってなかったことに気がついた。ベッドのそばの椅子に座っているのに。

「昨日も来てくれてたみたいで……。ありがとうございます」

「いえ、そんな」

 千夏も椅子に腰かけたので、近くの椅子を引き寄せて隣に座る。

 ベッドに横たわる包帯やガーゼで包まれた美久を改めて見る。こんな気持ちで美久と出会うことになるとは思わなかった

 美久は生きている、けれど動かない。もしかしたらこの美久は抜け殻なのかもしれない、と考えてしまう。自分が目の前にいるという強烈な違和感がそう思わせているのかも。同じ自分が同じ場所に存在するにはこうなるしかないとでも言うのか。

 眠り続けているこの自分は意志を持っているのか。もし自分が100あるとして、この状態の美久はどの程度の数値なのだろう? 30も無いはず。20? 10? わずかに一桁程度の自我はあるのかそれとも0なのか……。脳死でない以上、0ではないと思いたい。

 母と千夏の目を盗み、そっと美久の手に触れる。何かが反応してくれるかもしれない。自分が正気を保っているかは分からない。ただ、こうやって触れることで、五体満足な自分の活力か生命力が移ることを期待するけど、当然のように何も起きない。千夏と母の小声の会話以上に、医療機器の人工的な音だけが病室の中で響いているように聞こえた。


 美久は死なずにただずっと眠り続ける、誠が生きている以上美久に死は訪れないから。そんな最悪の想像を必死で振り払う。



「飯田君、疲れてない?」

「北原さんの方こそ」

 疲れてない? そう言いかけて近くの鏡に移った自分の顔が目に入る。血色は悪く、クマもできている。

「……そうみたいだね。いろいろと不安になって、ちゃんと寝れてないのかも」

 千夏からの返事はなく、ただじっとこちらの顔を見つめてきた。

「どうしたの?」

「ううん別に……大丈夫かなって思って」

 そんなに暗い顔をしていたのか。

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