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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
第三者
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どうなってしまうのか

 やっぱり、横になってもなかなか眠れない。ここ数年は美久の日が先行していて明日の10月24日はまず美久で迎えるはずだから、とりあえずは待ち合わせ場所に誠がやってくることを待つだけで難しいことはないけれど、やはり緊張してしまう。

 ぼんやりと天井と蛍光灯を支えるコードを眺める。あのコードに首吊り用のひもを結びつけたことがあるのを思い出す。自殺を考えた訳ではなく、自分が、自分の一人だけが死んだ場合どうなるか考えた時に、想像をより具体的にするために吊るしてみた。

 もし自殺や事故などで突然どちらか一人が死んで消え去ったら、自分は一人だけになる。自分は一人だけになれる。でも片方だけが死に、片方だけが生き残れるという保証はない。一つの肉体が無くなる時に、一つの魂も一緒に無くなってしまうかもしれない。

 念のため、自分は人よりも命を大事にしなければいけないと、自殺とは逆の結論に落ち着くことになった。


 ……失敗した。余計なことを考えると更に眠れなくなった。




 ……、……これは夢? 眠りにつく前のまどろんだ状態で見ているイメージ? 薄暗い部屋にもう一人いる。顔がよく見えない。誰だろう。近づいて顔をのぞき込む――。



*



 新幹線の車窓から流れていく景色を眺める。天気は雨。斜めの雨粒がガラスを叩いている。できれば降らないでほしかった。

 順番がずれて、計画前日の10月23日が誠側で終わったのに、当日の10月24日も続けて誠側から始まった。ずれたのは二年ぶりだ。どうしてこのタイミングで? 何か意味はあるのだろうか。

 今日は誠の学校の創立記念日。母もちょうどパートで夜まで帰ってこない。予定通りだ。

 新幹線は新横浜を過ぎ名古屋に向かっている。あと数時間後、何も障害がなければ自分達自身が初めて出会える。出会ったら何が起きるのだろうか。自分の前に誠が、美久が立っている姿を想像する。とても奇妙だ。鏡のようで鏡でない。自分自身が別個に目の前に存在する。けれど周囲の目にはそうは映らない。ただの中学生の男女でしかない。

 しかし出会えた場合、今日――10月24日の美久になる前に美久に会うことになる。そうなるとその時に美久が話した言葉や行った行動を、次に美久になった時に完全にトレースされなければ歴史が変わってしまうことになる。そうなると何らかの力が働いて、例えば出会った時の一切を記憶できずに結果として全く同じ言動をとる、といった辺りが、強制的に肉体を動かされて同じ行動をさせられる、よりはありそうかな。派手なものとしてはその時点で誠側で会った世界と、美久側で会った世界の二つに分岐するというものもあり得る。

 もっとシンプルに美久と誠が二つの人間として分離してしまうもしれない。出会った瞬間に、一つの人間が別個に活動する不自然な状態を解消するために、完全に二つの人間に切り離されるのだ。

 こうした分離の可能性を考える時、どちら側に別れるかではなく、どちら側に別れた方がよいかという問いかけが浮かぶことがある。誠の方は片親がいない、でも美久の方の環境は特に問題はない。まだ比較的女性よりも男性の方が生きやすい社会ではあるけれど、現時点で達成したいような大きな目標や夢も見つけていない。それならば美久としての人生の方が――。そちらを本体として生きていく方が有利だからそれを選ぶべきでは――。そんな思考に陥ることもある。

 分岐、分離、こういった一見マイナスに思える見通しも想定の中ではましな方ではないだろうか。自分達はこの世界のエラーかバグのような存在だと感じることもある。そんな不確かな存在は、この世界に大きな齟齬や問題が起きれば、それを修正するために真っ先に消されてしまう恐れもある。悪い想像をすれば、タイムパラドックスのように同じ場所・同じ時間に存在することは出来ず、収束させるために自分という存在が消え去ったり、最悪の場合はこの世界が終わってしまうことまであり得ないとは言い切れない。

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