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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
第三者
41/98

千夏

*



 千、二千、三千……。お金を数えるのが別に好きという訳ではないけど、この所はこうやってお札を勘定する時に高揚感と満足感を覚える。……やっぱり自分はお金を数えるのが好きなのかもしれない。


 10月23日。明日は誠側の学校の創立記念日で、計画の実行日だ。目標金額は一応貯まった。

 体調不良ということで誠側では部活を休む予定なので、今日の部活の後半はあまり調子が良くないように装わないといけない。


 二限目の授業が終わり教室移動の時、自分の2年2組から四つ隣の6組の教室の所で、廊下に出てきた女の子がつまずいて、教科書や筆箱の中身を廊下にぶちまけた。しかしその子に続いて教室から出てきた子は、転んでいる子を一瞥するだけで助けようとしなかった。それどころか一瞬笑っているようにも見えた。やや離れたところにいた自分の所にまで芯の折れた鉛筆が転がってきている。それを拾い、その女の子に声をかける。

 女の子が顔を上げた時、思わず声が出た。

「ちなっちゃん?」

 驚いたことに、その女の子は美久側での幼なじみの千夏だった。眼鏡をかけ、髪は肩の近くまで伸びて昔と雰囲気は違うけど、その顔や、大きくクリっとした目はしっかりと覚えていた。

「え?」

 千夏は驚きの声を上げ、不思議そうにこちらを見る。

 しまった、思わず昔の美久側でのあだなで呼んでしまった。誠としては初対面なのに。

 とっさに、わざとらしくノートの名前を見て確認したふりをする。

「えっと、北原千夏さん? 村山美久ってわかる?」

 千夏は再び驚きの声を上げる。

「知ってる! どうして?」

「自分は村山さんの知り合いで、北原さんの事も聞いたことがあって」

「そうなんだ、びっくりした。みくちゃん――村山さんの事だけど、元気にしてるかな?」

「元気だと、思うよ」

 何とかごまかせたかな。少し不自然な感じはしたけれど、千夏は疑う様子はない。

 美久とは一年前にSNSを通じて趣味の関係で――とりあえずSF小説にした――知り合ったことにした。教室移動で別れるまでに美久とやり取りした時の様子などを二、三話すと千夏は笑顔を見せてくれたけど、それ以外は昔と違い、暗い表情をしていることが気にかかった。

 千夏の家は転勤族で、引っ越してからも時々は手紙を出していた。流石に最近は交流も途絶えていたので、埼玉に引っ越してきたのは知らなかった。


 出会えたのは単純にうれしかった。

 明日、もう一人の自分に会いに行く事に、若干の良い兆しが見えたような気がした。

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