表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
第三者
37/98

偶然を装う

 蒼太さん自身は自分の昔の空想話については――自分より年上とはいえ――幼い頃に聞いただけでそれ程気に留めてないかもしれない。けれど、やはりこの場で杉本さんの『もう一人の自分』について深堀りはしづらかった。仕方なく、お休みのあいさつと、アルコールの危険性を蒼太さんに注意しただけで部屋を後にした。


 翌日、二人は登校時間までには起きて来ず、帰りにおじさんの家に寄った時にはすでにいなかった。

 何も聞くことが出来なかった。




「杉本さん?」

 杉本さんは驚いた顔をしていた。

「あれ? 村山の、確か従兄弟の……」

「美久です。一昨日はどうも」

 こちらがあいさつすると杉本さんも頭の後ろをかきながら、

「どうも、何か迷惑かけまして」

 と返事をした。今日はまともな顔色だ。

 杉本さんと再び出会ったのは、おじさんが経営している『果樹園』という名前の喫茶店の前。立地としては自分の家とおじさんの家との中間ぐらいにあり、通っている中学にも比較的近い。外見はレトロ調、というより年季が入っていると言った方がいい。一見さんは入りにくいかも。杉本さんは先程からこの店の前をウロウロしていた。

「えっと、ここで合ってる? 村山のお父さんのお店」

「ここですよ。蒼太さんにでも呼ばれたんですか?」

「うん。この前村山の部屋で忘れ物してて。昨日の夜見つけてくれたらしいけど」

「ああ、発掘したんですね」

「発掘……、そうだね」

 さぞや大仕事だっただろう。二日前に見た蒼太さんの部屋の様子を思い返す。

「大変だったと思うよ。それで、学校ではバイトとか取ってる講義とかタイミングが合わなくて、この店で待ち合わせって言われてるんだけど」

「そうなんですか。自分はおじさんから預かってほしいものがあるってお父さんに頼まれてて。……とりあえず、中入りませんか?」

 店の扉を開けるとカランカランと鈴が鳴り、カウンターでグラスを拭いていたおじさんがこちらに気づいた。

「いらっしゃい美久ちゃん、と、あれ? 杉本君も一緒かい?」

「たまたま店の前で会ったから」

「どうも、お邪魔します。先日は泊めていただいてありがとうございました」

「いやいや、こちらこそ蒼太がお世話になって」

 本当に。

 店内には他にお客さんもいない。

「窓際の席空いてるよ」

 端っこなので落ち着くお気に入りの窓際の席に座り、入り口近くで落ち着かなさげにきょろきょろとしている杉本さんに、「どうぞ」と同じ席に座るように促した。

 ここまではほぼ予定通り。杉本さんとこの店で会ったのも、二人でじっくり話せる状況になったのも偶然ではない。昨日、おじさんの家に寄った時に杉本さんの忘れ物があることと、この喫茶店で受け渡す事を聞いていたので、ここで待ち伏せる予定だった。店にほぼ同時についたのは偶然。おじさんからお中元のあまりを学校の帰りにでも取りに来てほしい、とお願いされたのも偶然。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ