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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
第三者
36/98

もう一人の『もう一人の自分』

 トイレに行って寝ようとすると、玄関に落とし物があるのを見つけた。茶色い財布で結構使い込まれている。女性用ではなさそうだし、蒼太さんか一緒にいた杉本さんのものかな? 蒼太さんの部屋に一応届けてみよう。

 二階に上がると蒼太さんの部屋から明かりが漏れていた。しかしノックをしてみても反応はない。電気はついているけど二人とも寝ているみたい。

「入りまーす……」

「あーー」

 地震が来た後みたいな散らかった部屋の奥から、蒼太さんらしき返事かうめき声か分からない声がしたので、軽くドアを開け見て中をのぞくと、ベッドに突っ伏している蒼太さんと、上体だけ起こしうっすら目を開けてこちらを見ている杉本さんが目に入った。

 寝ぼけているのか杉本さんはその体勢のまましばらく動かなかったけど、「あれっ、夢かな?」とつぶやいた。眼鏡を外した杉本さんはまつげが長く、きれいな顔をしていた。そこから動きがないので「あのー」、と声をかけると、杉本さんはこう言った。

「あっ、すみません。あの、もう一人の自分の夢を見ていたみたいで」

 驚いて立ち尽くす。今、杉本さんは『もう一人の自分』と言ったように聞こえた。

「なんて……言いました?」

 自分の言葉に杉本さんは目を見開いて驚きの表情を見せた後、バツの悪そうに頭をかいた。

「いや、何でもないよ。気にしないで」

「今、『もう一人の自分』って、言いませんでした――」

「うーーーーー」

 再びのうめき声でこちらの発言はさえぎられた。蒼太さんがうごめいている。

「おーい、大丈夫か?」

「のどが……カラカラ」

「……お水持ってきます。あ、そうだこれ、玄関に落ちていました」

「あっ、ありがとう」

 財布はやっぱり杉本さんのものだった。財布を渡してから、少し迷ったけどその場を離れて台所に向かった。


「あー、生き返った」

「本当に大丈夫か?」

 蒼太さんがテーブルにコップを置こうとして、本がなだれ落ちた。

「あとこの部屋汚いな」

「ごめん」

 これはどちらのことを謝っているのだろう。両方かな。

 杉本さんは床に落ちた本をテーブルの上に積み直している。この杉本さんは一体何を知っているのだろう? まさか自分と同じ境遇なのか? しかし蒼太さんがすっかり目を覚ましてしまった。

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