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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
第三者
35/98

蒼太さんと杉本さん

「そうか……」

 政也は少しうつむいてからこう聞いてきた。

「誠は、サッカー楽しい?」

「楽しいよ。最初はちょっと不安だったけど何とか上達はしたし、少しぐらいはみんなの役には立てるようになってると思う」

「そっか、良かった」

 ほっとした表情を見てふと、政也は無理にサッカー部に誘ったことを気にしていたのかなと思った。しかし自分はすでにサッカーが好きになっていて、政也には感謝している。そうでなければ今頃は――。



*



 父は出張、母は同窓会で遅くなるということで今日はおじさんの家に泊まることになった。最小限の荷物だけ簡単にまとめておじさんの家に向かう。昔から時々泊まりに行っているので馴れたものだ。

「悪いわねー。折角美久ちゃんが来てくれたのに、蒼汰(そうた)ったら飲み会があるとかで」

 おばさんはそれ程申し訳なさそうにはせず、いつものように世間話やおじさんと、従兄弟で現在大学生3年生の蒼汰さんの愚痴をしゃべり続けていた。



 夜11時過ぎ、インターフォンの音がするので寝室から顔を出して様子を見る。誰だろう。

「すみませーん、村山君を送りに来ました」

 蒼汰さんの声ではない。ドアを半分だけ開けて姿を確認すると、顔の赤い、恐らく蒼汰さんと同じぐらいの歳の、眼鏡をかけた男の人――多分友達か何か――と、焦点の合わない目をしてその男の人に支えられている蒼汰さんが見えた。

 大体状況は理解できた。二人とも飲み会で相当酔ってしまい、比較的酔ってない(顔も手も赤い)この人が、酔いつぶれた蒼汰さん(顔色は普通で酔ってるようには見えない)を支えて家まで送ってきてくれたといったところだろう。蒼太さんが親戚の集まりで酔っぱらいすぎた所は何度か見たことがあるけれど、不思議と普段と顔の色や表情は変わらず、一見すると酔っぱらってるとはわからないのだ。実際は意識が飛んでたり平衡感覚が無くなるぐらい酩酊しているらしいけれど。

「すみません、村山君……酔いつぶれちゃって……あ、僕、杉本(すぎもと)って言います。大学の友達で……」

 遅れて出てきた叔母さんと一緒に蒼汰さんを支えようとするけど、大丈夫、と蒼太さんが呟き、壁に手をつきながらゆっくり歩くのを見ておばさんに任せることにした。悪いなー杉本、と蒼汰さんがか細い声で呟くのが聞こえた。

「かあさーん、……こいつ、俺のせいで帰りのバス無くなっちゃったから……泊めようと……思うんだけど。……俺の部屋で」

「はいはい」

「すみません」

 二階に行くおばさんと蒼汰さんの後に続いて杉本さんも階段をゆっくり昇っていく。大丈夫かなと思ったけど、手すりを掴みながらでも足取りはしっかりしていた。

 蒼太さんが二階に消えていく時、

「汚い部屋だけどさ」

「ほんとに汚いからね」

「うう……」

 というやり取りが聞こえた。蒼太さんが片付けできない人なのは親戚中が知っている。


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