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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
それぞれの自分の世界
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どうすればいいのか?

 自宅への帰り道の途中、遠目に奈良原さんが数人と歩いているのを見かけた。全員が部活用の同じバッグを持っているので同じ弓道部なのだろう。一瞬目が合って笑いかけてくれたので会釈だけ返す。

 今の自分が二つに分かれた場合、もし自分が誠の側になったなら、こうして奈良原さんや莉子にすれ違っても気づかれることはない。美久の側の友達や知り合い、家族とも他人としか認識されなくなる。自分の今までの人間関係の多くがリセットされる。半身が無くなってしまうようなもの。

 『自分』というものは一人でなければいけないのかな?

 迷ってしまう。自分がたった一つでないこと、それは人の頭脳では――少なくとも自分の頭脳では――割り切れないとしても。

 悪い想像ばかりしてもしょうがない。何も根拠がないのに。発想を変えてみたらどうだろう。今の特異な状態だってメリットだってあるはずだ。学校生活で行っているように誠の方ではスポーツを頑張り、こちらでは勉強に集中してうまく分担することが出来る。人の二倍の時間を生きられる訳だから、かなり得している。こうしたメリットがあることを考えると、今のままでもいいのかもしれない。

 そうこのまま。このまま……、自分の半分だけしか知られないままで……?


 どうせ自分以外の人間には誰だって、自分自身のことを一部しか分かってもらえないものだから。それは仕方のないことという気持ちにもなる。だけどこのままでは、友人にも家族にも限られた姿しか見せることが出来ない、その存在すら知られない。一生を共に過ごす人ができても、それは同じ。完全に理解してもらうことは出来ないとしても、知ってもらうことすらできない。

 すべてを話せば……、今の状態が解決されなくても、分かってもらえる人がいればそれで十分では。でも……作り話や妄想だと思われたら。証拠は何もないのだから。成長した今なら、理解者を作るために誤解され、否定されるリスクを受け止めて自分について語れるのでは、と思う時もある。だけど多分、その覚悟はまだない。

 自分はあの頃のままだ。

 相手にされず、怪訝な顔をされ、嘘つき呼ばわりされ。

『おかしなことを言う子だね』

 今も脳裏に浮かぶ光景。

 それだけでなく――。自分が苦しむのは、いつか耐えられるようになるかもしれない。でも、家族をまた悩ませてしまう。

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