変化・確認
切り替われば身の回りのものも含めて世界が入れ替わる、という構造はすでに理解していたとは言え、あれほど気に入って放すまいとしていたものが無くなるのは寂しかった。珍しくわがままを言って、次の週末には一緒におもちゃ屋に行って買ってくれるよう父に頼みこんだのを覚えている。それぐらいの歳の男の子が対象の物ではなかったけど、そんなことはどうでもよかった。
美久側でも誠側でも毎日朝起きると抱きかかえ、夜は一緒に寝て、そして翌日起きた時もそのぬいぐるみはそばにいてくれた。ぬいぐるみそのものも大好きだったけど、そのことがまたうれしかった。今から思えばそれだけ執着していたのは、自分たちの特異な状況に対するストレスを和らげるためだったかもしれない。
ある日誠側の自分の不注意で飲み物をこぼし、クマの耳を汚してしまった事があった。最初はそこまで気にならなかったけど、段々と美久側の汚れてないクマと、誠側のクマの違いが嫌になってきて――別のものだと思い知らされて来て――美久のクマの耳を自分で汚してしまった。
川沿いの帰り道はやっぱり暗くなり始めていて、昨日とは違い少し涼しかった。
家に着き、クローゼットの奥に置きっぱなしだったぬいぐるみを引っ張り出す。表面は擦り切れて、色も褪せてしまっている。耳の汚れはうっすらと残っていた。誠の持っているものと直接比べれば細かな違いも目立つかもしれないけど。
あの頃はこれが唯一の、自分たちを結ぶか細い糸のようだった。
現在、ある計画の準備を進めている。
直接美久と誠が対面するというものだ。
会いに行くのは誠の方から。誠側の時に美久のいる姫路まで行って、初めて自分と自分が会う予定だ。
確認したい。自分達二人が――いや一人が、同じ世界に存在することを。




