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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
それぞれの自分の世界
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サイクル

莉子たちが帰った後、誠の方でも小テストがあるのを思い出した。社会の宿題だけじゃなかった。

 教科書を広げる。出題するページは指定されていたから難易度は大したことがないけど、使用している教科書が誠の学校と美久の学校では違う。そもそもその範囲を書いていたノートは誠の手元にしかなかった。自分同士の切り替わりでは、物体は何一つ持ち越せず、引き継げるのは自分の記憶だけ。とりあえずその記憶を頼りに同じ内容の箇所をパラパラとめくり、記憶を整理するだけにしておいた。

 次の今日早く起きれば確認しよう。起きれなくても自分の学力ではそれ程困らないだろうけど。

 いつものように、目が覚めたら誠になることをぼんやり思いながら美久の一日を終える。




 美久になる日と誠になる日のサイクルは現在美久側が先行しているけれど、これは必ずしも決まっているわけではなく、時たま連続で誠のままや美久のままになる。法則性はまだつかめていない。

 睡眠が交代のスイッチになっていることは分かっているので、何度か徹夜して、片方の状態を続けたらどうなるか実験してみたことはあるけれど、30時間程度で限界がきて寝てしまったら切り替わっていた。ちなみに昼寝の時はめったには切り替わらないけど、昼寝の時に切り替わってしまった場合、もう一人の方は通常時と同じように朝起きたタイミングで交代となる。反対側はいつもの様に夜に寝て朝に起きているのだから、こちら側が昼寝だろうと関係ないということだろう。時間のずれが厄介なので昼寝はあまりしないようにしている。


 こうした二重の生活を送っているので、自分の人生は他人の倍あるとも言える。これに関しては、自分は恵まれているかな。折角の倍ある人生、誠の方ではスポーツを、美久の方では勉強を頑張るように分担している。特別誠の体格が――誠の両親を見ての予測で――他人より優れている訳ではないし、自分自身の知能や経験が同じ体感時間を経た人と同程度にならないとしても、この特殊な人生は利用できるだけ利用してみようとは考えている。

 ――そう考えた方が、いいはずだ。

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