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2/1 -いちぶんのに-  作者: 藍内
それぞれの自分の世界
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自分

 自分たちの状態を考える際良くイメージするのは、黄身の二つ入った卵のできるメカニズム。本来なら一つの殻や卵白に一つの黄身が入っていくけれど、排卵のミスやリズムの乱れで二つ入ってしまうそうだ。そういった小さなエラーが自分たちの産まれる時にも起きてしまったのだと。双子と違って二つに分かれているのは身体のみ。心は分かれなかった。

 神様も完璧ではない。ミスもするのだろう。だけどその不具合を直そうとしないのは神様としてはどうなのかな。しかも不具合を突き止めようとしたり直そうとすると不思議な力で邪魔をしてくる始末だ。

 だから自分たちの特異な状態を誰にも理解されないでいる。それを示せる根拠は何も手に入れられず、自分自身ですら本当にもう一人の自分がいるのか確かめる方法がない。ただ夜ベッドに入り、朝目覚めればもう一人の自分になっている、これが崩れることなく繰り返されるから信じられるだけだ。

 『自分の名前は村山美久(むらやまみく)でもあり、飯田誠(いいだまこと)でもある』。これは『私の名前は村山美久でもあり、僕の名前は飯田誠でもある』と言う方が自然な感じに聞こえるかもしれない。『自分』という一人称は堅苦しい印象を受けることもあるし、時によっては自分自身ではなく話している相手の呼称にもなり、使いにくい場面もある。しかし『私』や『僕』のように性別を意識させる一人称よりそちらの方を使いたくなる。

 現在はもうしなくなったけど一時期だけ、美久の時は女の子らしいものを、誠の時は男の子らしいものを好んでいた、というよりも、そう見せかけてただけかもしれない。今では珍しいスカートの装いとか、男の子らしい無鉄砲な冒険とか。周りからの「どうしてこの子は女の子(男の子)なのに――」と言った声や視線が邪魔に思い出したからだ。長続きはしなかったけど。

 たとえそんな時でも、『自分』という一人称は美久の時も誠の時も使っていたけれど。


 そんなことを考えているうちに眠気が強くなってくる。明日――ではなく、次の今日は誠側。サッカーの練習試合がある。頑張ろう……。

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