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TRIP!!  作者: すももっち
14/33

やるしかない状況なんだ

明朝。

俺たち5人(4人と1匹)は横並びに並んで、ごくりと唾を飲み込んだ。

少なからず誰しもが緊張しているようだ。

そりゃそうだろう。

人間が滅多に近付かない禁断と呼ばれる島に行こうとしてるのだ。

俺は猫耳の女の子とかいたらいいなぁという程度だけど。

別にそっちの趣味はないが、男のロマンとして。

「覚悟はいい?」

アリスの言葉に全員がもう一度喉をならし、そして頷いた。

覚悟は出来た。

つうか、俺にはそこまで強い覚悟はないんだけど。

「さぁ、行くわよ」

アリスはこんぺいとうを数粒口に含み、ガリッと音を立てて噛んだ。

それが全ての入り口の合図だった。

始まった。

この世界の終わりへの始まり。


*******


来て早々なんだと思うんだが、やってしまった。

まさかこんなことになるなんて思わないじゃないか。

悪いのはあのへなちょこトンボリスのせいだ。

あいつは神様じゃない。

自称神様だ。

でなきゃこんなことにはなってない。

来たまでは良かった。

アリスからのまばゆいまでの白い光で目が眩み、目を開けた時には畑の真ん中。

そこでくわを持っていたクマがえ?と言いたげに俺を見つめていたから、たぶんここは禁断の島なのだと思う。

だってクマだぞ。

クマがつなぎ着てくわ持ってるんだぞ。

これぞ異種族。

こんなんじゃ猫耳じゃなく、猫そのまんまが出てくるぞ…。

クマは突然現れた俺に最初こそ目をパチクリさせていたが、次の瞬間うぉー!と叫んだ。

「にんげんだぁー!!」

人間ですいませんでしたぁ!!

俺は畑から飛び出し、とにかく走りだした。

追い掛けて来るのはくわを持ったクマだ。

必死にもなる。

しかし、なぜここには俺1人しかいないのだろう?

みんなはどこに行った?

つうかちゃんと来てんのだろうか…。

そっから疑問だ。

でも来てるのだとしたら、バラバラに着陸したことになる。

護衛の意味ねぇじゃん!

クロードとリッドマン(ついでにトンボリス)はともかく、マーサはやばいぞ。

マーサがこんなクマ吉に追い掛けられたら、すぐに捕まってめったんめったんのぎったんぎったんに…。

まじでやべぇじゃん!

状況はかなり悪い。

それよりも人の心配をしてる場合じゃなさそうだ。

このままじゃクマ吉に殺されるぞ!

そこで俺はない頭を振り絞った。

そして悪事を思い付いてしまったのだ。

そこに幼気な二本足で立つウサギがいたら誰だって思い付くアレ。

考える余地などなかった。

「それ以上近付くなっ」

白いウサギの長い耳を一つに束ねて鷲掴み、クロードに護身用と渡された短刀を右のポケットから抜き出し、そのウサギの首に突き立てた。

耳を持つ手からウサギが震えているのがよく分かる。

ごめん。

まじでごめん。

身長から考えてまだ子供だろう。

小学生の男子が着てそうな服装だから、たぶんこいつはオスだ。

案の定クマ吉は立ち止まり、俺を睨みながら唸った。

田舎のような風景なこの場所は、人集りが出き初めている。

イヌやらキツネやらもう訳が分からないが、どの顔も良い表情を見せてはくれない。

「リグル…!」

人集りの向こう側からウサギの白い耳が揺れるのが見えた。

声からしてこのウサギの母親かもしれない。

胸は罪悪感でいっぱいだが、やってしまった以上もう引き下がることは出来ないのだ。

やるしかない。

「こいつを無事に返して欲しいなら俺の質問に答えろ」

声が震えていないことを祈る。

目の前のくわを持ったクマ吉は、唸りながら渋々頷いた。

「ここは禁断の島か?」

クマ吉は頷いた。

やはりそうらしい。

「俺以外に人間はいたか?」

クマ吉は首を横に振った。

まだ誰も見つかってはいないのか…。

もしくはもっと遠くにいるのかも。

どちらにせよ俺はどうやってこの状況を打破すればいいんだ…。


双波が悪人になった瞬間。

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