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思いを伝えるか?それともなかったことにするか?

作者: 光井 雪平

 いつからだろうか、彼女のことを好きになったのは。

 高校の入学試験で始めて見かけ、きれいな人だと思った時からだろうか。

 入学式で同じ高校なのか、と思った時からだろうか。

 一年生で同じクラスになって、隣の席になった時からだろうか。

 二年生では違うクラスになって、少し残念だな、と思った時からだろうか。

 三年生ではまた同じクラスになって、修学旅行で同じ班で一緒に楽しんだ時からだろうか。


 それは重要なのではないだろう。今重要なのは彼女とはもう会えなくなる可能性が高いということだろう。

 今日は卒業式だった。彼女は遠くの大学に行くことになっている。僕は近場の大学に行くので、きっと会うことはないだろう。

 同窓会とか、もしかしたら町中でばったりということはあるかもしれないが、きっと彼女とは会えない。なぜだかわからないが、僕にはそう確信できた。


 僕は、今彼女にこの自分の好きという思いを伝えるかどうかを悩んでいた。


 だけど、怖かった。僕の気持ちを彼女に伝えることが。


 これを伝えたとして、どうしようというのだ。僕は彼女と今後こうなっていきたいというビジョンみたいなものはないのだ。

 ただ、今言わなければ後悔する、という思いしかないのだ。


 それにこれを伝えることが、彼女の高校の思いでの中で嫌な思い出の一つにはしたくなかった。彼女は僕のことが嫌いもしくは、何も思っていない可能性すらある。そうすれば、僕がこの気持ちを伝えることは彼女にとっては余計なことかもしれない。

 そう思えば、こんな気持ちはなかったことにするべきなのかもしれない。僕はどうすればいいのだろうか。


 思いを伝えるのか?、それともなかったことにするか?。

 決めるのは僕だ。


 僕は卒業式が終わり、誰もいなくなった教室でそのことについて一人悩み続けていた。


「まだここにいたんだ、何してるの?」


 それは突然のことであった。僕が声を聞こえたほうを見ると、そこには自分が思いを伝えるかどうかを悩んでいた彼女がいた。


「いや、少し考えごとを。どうしてここに?」


 彼女は一度何かを言おうとした瞬間、それをやめると、少しして顔をそらして、こっちを見ずにゆっくりと小さな声で返答する。


「君に会いに来たの」

「僕に?」


 僕はすっとんきょうな声を出す。彼女はこちらに顔をむけないままゆっくりとうなずく。


「あのね、私ね。君と同じ学校でよかった」


 彼女は突然そんな事を言う。僕はそれを聞いて、つい反射的にこう返してしまう。


「僕もだよ」


 それを聞いた彼女はこっちを向くと、びっくりしたような表情をする。少し顔が赤かった。僕もついそんなことを言ってしまた自分にびっくりしてしまう。顔も赤くなったような気がした。

 しばらく僕たちは何も言わず無言のままであった。そして、僕は今言わなければならない、と思うと彼女のほうをまっすぐ見ると、伝える自分の気持ちを。


「「あなたのことが好きです」」


 偶然であったのだろうか、彼女も同じ言葉を言う。僕と彼女は相手の言ったことにびっくりした顔を見せると、少しして二人して笑いだす。

 僕は何か色々考えていたのが、ばかばかしくなってしまった。彼女もそうであったようで、ほっとしたような表情を見せながらこっちに向かって言う。


「思いは一緒だったみたいね」

「そうだね」


 僕は彼女から少し、目をそらしながらぼそりと言う。


「僕この先どうしたいいかわからないんだ」

「私も」


 彼女は即座にそのように返答する。それを聞いて、僕は彼女もそうなのか、と思う。


「あのさ、僕は君といつも通り、今までののようにいたい。変かな?」

「変じゃないよ、私もだから」


 彼女は少し恥ずかしそうな笑顔でそう言う。僕はそれを聞いて、少し安心する。僕は彼女に提案する。少しおかしな提案をする気持ちがある。


「これからのことはいつか決めるってのはどうかな?今はよくわからない」

「いいと思う。決まるまでは今まで通りのような感じでいいと思う」


 彼女は提案に承諾してくれる。僕はその返答を聞いて、笑顔になる。彼女も笑顔であった。


 僕と彼女はその後、しばらく二人で教室で思い出を話しあった。いつも通り、今までのように。


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