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千波と  作者: 久木
9/13

すれ違い

次の日も、何だか情けなく、悔しい気持ちと、嫉妬心が続いた。改めて、自分がこんなにも嫉妬深い性格だったとはなぁ、と自分に苦笑した。嫉妬する自分が情けなかったし、独占欲に似た気持ちが自分の中に有ることに気が付いた。既婚であるにも関わらず。そんな自分勝手さに、理性では呆れつつ、しかし本音ではどこか諦めきれない気持ちもあり、その日は、そんな自分の気持ちを楽しむことにした。


そして千波からは、LINEが来た。

「くわっち、昨日はホントにごめん!! 今度は11月中に改めて二人で飲もう。」と連絡が来た。

何だかんだで申し訳無いと思ってるみたいだ。カラオケ中も、後輩くんと私、なんか張り合ってたもんな。目はお互い笑ってるが、修羅場になってた様に思う。

千波に改めてLINEした。

「連絡ありがとう。そうだね、今度はチーズフォンデューが良いなぁと思って、こんな店を考えてるんだけど…」

気が付けば10月中頃。マラソン大会の8月は過去の出来事となり、寒さを感じる季節となっていた。前回に続いて今度こそ鍋物が欲しいシーズンだ。

そうして改めて11月の飲み会の約束を取り付け、またまたプレゼントのお菓子を買い、当日の準備を進めた。


それから、約束の日の前夜、突然、千波からLINEが来る。

「くわっち、ごめん。実はたった今、前の営業所の所長から明日、仕事終わりに緊急会合する話が来て、くわっちとの約束、遅れるかも。」

ここで私は引くべきだったかもしれない。しかし、10月の事もあり、千波と二人で会いたい気持ちを諦めきれずこう返した。

「わかったよ。寝る前に大変な話が来たね。とりあえず明日は、待ち合わせ場所の近くまで行って、待ってるから、終わったら連絡して。」

そう返し、当日仕事が終わって直ぐに電車に乗り待ち合わせ場所まで向かった。電車に乗ったと連絡すると、千波からは

「今夜は長引くかも。私、別の駅前で所長達と会う予定だし、待ってて貰うの悪いよ。」

とのことだ。構うもんか。


そうして待ち合わせの駅近くの広場で千波を待った。流れる人混みを眺めながら、二人連れで歩くカップルを見ると、友達同士なのか、恋人なのか、と考えてしまう。千波に会うまでは、皆が恋人同士だろうと、当然の様に考えていた。しかし、今は友達同士や同僚同士もあり得るのだと思うようになった。11月の夜、一人で待つのは地味に寒かった。千波からは連絡が来ない。恐らく、緊急会議が当に開催されているのだろう。

そして千波を待つこと2時間。時計は21時過ぎを指している。連絡は無い。この調子だと今から会っても、彼女を終電で返すことになる。私は連絡の無い千波に、

「忙しそうだし、一旦帰るね。俺達の事は色々落ち着いたらにしよう。」

とLINEを送り、帰路に着いた。恋人でもないのにこれ以上待ち続ければ、重たいやつだと思われる、そう思われたくなかった。でも、千波との繋がりが消えてしまうのも少し怖かったのも事実だ。

「俺達のこと」そうやって言うことで、千波と職場の元同僚と言う関係だけではないと、思いたかった。その証拠に二人で会い続けてきたのだと。


しかし当然ながらと言うか、千波とはあれから飲みに行ってない。

それぞれ外的な要因があってやむを得なかったにしても、千波は私より、他の人間関係を選んだと、私は考えている。ここら辺が潮時か。また縁があれば、或いはお互い引かれる物があれば、また一緒に食事ぐらい行くだろう。


やっぱり二人で会っても3回。この間に何か無ければ、男女関係は進展することはない。そう思えた関係だった。今はそう思う事で、この関係を早く過去の物にしたい気持ちと、それでも千波ならいつかまた来てくれるだろう、それまで気長に待とう、と言う気持ちが同居していた。

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