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千波と  作者: 久木
4/13

転勤、次の約束

7月の初め、私は転勤となった。とは言っても、6月までいた営業所の隣の営業所だが。


転勤に伴い、千波からLINEが来た。

「辞令を社内報で見たけど、頑張ってね。落ち着いたら飲みに行こう。」

ごめん、5~6月連絡出来てなかった。申し訳なさがありつつも、

「ありがとう。7月初めはバタバタするけど、落ち着いたら必ず連絡するね。」

と返事するのが精一杯だった。


転勤に伴い、7月初めは歓送迎会で大忙しだった。新しい部署で上手くやれるかはとても不安だが、上司となる山木次長は、私が新入社員だった頃、本部から時々くる教育係だった方であり、随分良くして頂いたのも覚えているので、その点は安心だった。


7月は新しい職場に慣れるのが精一杯で毎日が過ぎていった。3週間ほど過ぎたある日の帰り、山木次長と帰っていると、

「森山(千波)とは、3つ前の職場で一緒だったんだろう。面白いやつだよなぁ。」

と、千波の話をふられた。

「とっても前向きな方ですよね。話や切り返しも抜群に上手ですし、同期ですが尊敬しています。」

当たり障りのない事をいっておく。しかし話はそれだけでは無かった。

「それで、くわっちは森山とは今度、いつ飲みに行くんだ?」

「さあ、なんのことですかねぇ。彼女みたいな素敵な娘が、私なんか相手にしませんよ。」

「そんなもんか? 仲良いみたいじゃないか。」

どこから聞いたか噂になっているようだ。そう言えば、千波の営業所の次長は、山木次長と仲良しだというのは聞いたことある。しかし、千波とのことは、私は誰にも話していない。まあ、どこからか話は漏れるのだろうが。山木次長は尚も続ける。

「俺の仲の良いやつと、森山と3人で飲みに行ったことがあってな。まさかくわっちと二人で森山が行くとはなぁ。」

「男友達が多いタイプですし、5~6年前も私の同期の別の野郎と飲み友達だったみたいですよ。多分、私は彼女の中の『同期の飲み男友達』枠にすっぽり嵌まったんですよ。私も女友達って感じです。」

「そんなもんかなぁ。」

駅の改札が迫ってきたので、山木次長とはここで別れた。お互いに帰る方向が逆だからだ。

千波との事が噂になっているのだと、この時初めてわかった。千波に変な被害が及ばないように、何か手を打たねば。とは言え、何か有効な手立てが有るわけでもなく、知らんふりするか、女友達だと公言するかの二択だが、私はもともと隠すつもりだった。いや、もう公言してしまったが。しかし、千波は敢えてオープンにする事で、周りに友達宣言をしようと考えていたようだ。


それから千波に飲みの誘いのLINEを送った。

「待たせてごめん、ようやく新しい部署も落ち着いてきたよ。それで、今度のお店と予定だけど…」

生ハム食べ放題の肉バルとワインバーを候補にあげる事にした。肉バルは下見もしており、店の雰囲気には自信がある。そうすると千波は乗り気で、

「くわっち!連絡ありがとう。生ハム食べ放題、楽しみ。私の予定は…」

と返ってきた。やはり店までこちらで下調べした上で、提示してあげる、彼女が迷いだした時の為にこちらの希望を伝えた上で、選ばせる、そう言ったリードの仕方を千波は求めている様に思う。予定はトントン拍子で決まり、8月上旬になった。


しかし、8月の初日に千波から、予定をずらして欲しいとの連絡が来た。何でも、職場で出場予定のマラソン大会があり、メンバーとの決起大会を同じ日に開催すると。そんな訳で、特に反対する理由もなく、千波との飲み会は、8月の2週目の金曜日となった。3月の飲み会から4ヵ月。久し振りに会える事に、私の胸は高鳴った。

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