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千波と  作者: 久木
3/13

二人で食事

待ち合わせの駅には予定の15分前に着いた。まだ千波は来ていない。しかし、地下鉄でもうすぐ着くと、千波からLINEが来た。私は駅の百貨店でゴディバチョコを買い、鞄に忍ばせておいた。

そして、待っていたら、

「ごめーん、くわっち待たせた?」と言って千波が現れ、私の肩に触った。相変わらず男の扱いが上手だ。そんな彼女は今日、キャメルのロングコートに、グレーのタートルネックのセーター、そして黒いロングスカートと言う出で立ちだった。


そのまま立っているのもなんなので、お店はこっちだよと促し、二人ならんでバーの様な飲み屋に向かった。

その後、店の入口に着いた。地下にあるのか、入口から階段を下っていく。そして、フロアへ出た。

バーの様な落ち着いた店を想像していたが、クラブのような暗さと内装の派手さ、場所によってはレーザーやミラーボールが光っていたり、席もソファー席や高い椅子のカウンターがあったり、BGMもR&Bだったり、これはもはやダンスホールにオープンキッチンを置いたクラブだな。


「すごーい。こんなにお洒落なお店にしてくれなくても、普通のお店で良かったのに。」

驚く千波。

「俺も想像以上にお洒落でビックリやよ。けど、初めて二人で行くんだし、素敵なところに連れてきたかったんさ。」

「そんなに気を使ってくれなくても。」

「楽しい飲み会にしようよ。」

そういって、カウンター席に着いた。椅子がかなり高い。千波は身長170中盤、私は180ジャストだが、そんな私たちでもこの椅子は高い。


少し落ち着かないかと思ってたが、話し出すと、周囲の喧騒が返ってBGMとなって、話が進むもんだ。千波の職場の話、私が今の職場に着任する前に研修でお邪魔した別の会社の話、お互いの共通の知人の話、どれだけ話しても話し足りなかった。

そこで気になったのは、前の千波の職場で一緒だったある男子職員に不倫を求められたが、千波にその気はなく、それ以降はその人と飲みには行ってないとの事だった。因みにその男子職員は、ある支店で不正がバレて、左遷となっている。


千波は気さくだ。そしてリーダーシップもある。色気もまあある。そこが魅力なんだろう。男とも二人で飲みに行くこともいとわない。一方で仲の良かった同期の女性職員達は、皆家庭を持ち、千波と飲みに行くことは無くなったのだろう。

千波は、気さくに飲みに行けて、普通に愚痴の一つでも言い合える同年代が欲しかった、それがたまたま今回は私だったのだ、と思った。


千波は嫌いな女性の先輩から、毎日、ブラックサンダーを貰うらしい。その先輩のことだいっ嫌いと言ってる割には、お茶に付き合ったり、色々相手してるのだと。

私もブラックサンダーではないが、頑張る千波にゴディヴァチョコをあげることにした。

「そんなに頑張ってる、千波さんには、お兄さんがご褒美あげちゃうぞ。」

「ええ~!なんだか悪いよ、私、バレンタインデーあげてないし(笑)」

「君のために買ったんだから、どうぞ貰ってよ☆」

「くわっち、ありがとう。」


その後、千波から奥さんとはどうなの、と聞かれた。どう話すか迷ったが、もう一件行くなら話すよ、と言って会計を済ませて飲み屋を出た。


その後、千波とは近くのバーで飲み直した。そこで、やっぱり千波は気になるらしく、もう一度妻との事を聞いてきた。私は洗いざらい話すことにした。妻の家に住んでたこと、妻が味方になってくれなかったこと、毎週に渡る義父の厳しい指導、そして妻の病気、私の実家への別居、今の職場に配属されてからの寮生活、なぜそれを選んだのか、妻には愛情が残ってないこと、妻と喧嘩すれば義理の親が入ってくる事、正直、話しすぎたと思う。

しかし、先に結婚した他の同期の男達も、色々苦労してるようだ。離婚したやつも居る。そんな話を色々千波は聞かされてるのだろうか、私に話してくれた。最後に

「ごめんね、何だか俺の事ばっかり愚痴っちゃって。」

「くわっち、良ければこれからも私が聞くよ。」

と言ってくれた。何だか心強かった。


それにしても、下らない私の恥を千波に晒しすぎてしまった。しかし、一方では別で仲の良い同期の二人以外に、そんな話をしたのは千波だけだった。しかし冷静に見ると私の話は、結婚したが上手く行かなかった、ただそれだけなのだ。そんな話は巷に溢れている。


千波とは終電で別れた。

「くわっち、今日はありがとう。」

「俺の方こそ、ありがとう。楽しかった。」

「私も楽しかった。」

最後は彼女から握手を求められたので応じた。

冷たかった。何か千波に同情されてしまった気がする。


千波は女友達、そう言える存在なのかもしれない。


それからラインでお礼を送り、5~6月にでもまた飲もうかと言う話になった。

しかし、6月下旬に入っても千波を誘えずにいる。

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