続編未定
首都高の高架下で座っていた。キャリーケース。重いカバン。重いカバン。と重いカバンを地面において
しゃがみこみタバコを吸いながらスマホを見ていると急に若い男の子が隣にしゃがんできて話しかけてきた
「楽しいですか」
なんだこいつは。と最初は思った。いや、最初から最後まで思っていた。
「つまんないけどそれが楽しい。けど今は普通、なんとも思わない」
そうですかと彼は当たり障りない相槌をうった
特にどこかへ行きたいわけでもなく別に帰りたいわけでもなく、ただ座りたくなったから座っていただけだ。
「僕と一緒に飛びませんか」
なんだこいつは。
最初はシャブ中にでも絡まれたのかと思った。だがそんなことは無かった。
彼は真面目でどこか穏やかさを感じる顔をしていた。
迷った。だがなんとなく飛んでみたくなった。
「キスしてくれたらいいよ」
正直自分でもなんでこんなことを言ったのか分からない。
彼は一瞬驚いたような表情をした。少し嬉しかった。
すると彼は私のタバコを取り上げ1口吸って返してきた。
つまらん。私が返されたタバコをすおうとした時腕を捕まれ首元に手を当てられキスをされた。
この不意打ちは私も予想できなかった。そして彼は少し笑った。
「これで飛んでくれますよね」
「いいよ」
何故か何も思わなかった。
「質問してもいいですか」
「なに」
「どうして飛ぼうと思ってくれたんですか」
「なんとなく」
タバコの火はもう消えた
「そうですか、じゃあ行きましょう」
なんだこいつは
「じゃあ私からも質問」
「なんですか」
「どうやって飛ぶの」
「手を繋いでそのまま後ろに倒れるだけです」
何を言ってるんだこいつは
やはりシャブ中だったのか?いやそんなことはない私はちゃんと彼の目を見た。本気だ。
「行くなら行きましょう。私の気が変わらないうちに」
「そうですね、最後にひとついいですか」
「はいなんでしょう」
「後ろに倒れる時絶対下を見ないでくださいね。まっすぐ前だけを見て倒れてください。」
私は返事をしなかった。
「では行きましょう。手を、、」
ふと思う。飛ぶというより落ちるの方が正しいのでは、と
だが今更どうでもいい。
そして私たちは飛んだ。
2019年11月15日。午前2時6分。私という存在は世界から消えた。