咲也・此花STEPS!! ~訳ありフリーターの俺が花いっぱいの国でにゃんこな王様になるまで~
砂漠と海に消えた国~ユキマイとイメイとスノーフレークスのおはなし~
この物語はフィクションです。
実在するいかなる個人、団体、書籍、にゃんことも関係ありません。
むかしむかし、ユキマイという名の小さな国に、スノーフレークスとよばれるお花がありました。
まいとし春がくると、まるで雪の結晶のような、かわいい白い花をさかせます。
そして、青空いっぱいに、わたゆきみたいなわたげを飛ばします。
その年の雪が深ければ深いほど、たくさん花を咲かせ、たくさんわたげを飛ばします。
そんなスノーフレークスには、すごい力がありました。
きれいなみどりのはっぱをもんで、ケガをしたところにつければ、あっというまになおってしまいます。
お茶にしてのんだなら、どんな病気もすぐなおります。
そして、さびしいときにそっと話しかけると、かれんな声でこころに語りかけ、やさしくなぐさめてくれるのです。
だからユキマイのみんなは、スノーフレークスが大好きでした。
ユキマイをまもるみどりの神さまが、みんなのためにさかせてくれたお花だといって、とてもとても、大切にしていました。
* * * * *
けれど、そんなスノーフレークスの力に目をつけたのが、となりの国、イメイを支配していた、わるい王さまです。
王さまは、ユキマイの神さまをつかまえて、ユキマイ国をのっとり、国じゅうのスノーフレークスをとりあげてしまいます。
そうして、『スノーフレークスは、みんなをだます悪い花だ。みつけたら全部、ぬき取って焼いてしまいなさい。そうして、たくさん畑を作り、たくさん野菜を作って王さまに献上しなさい』、そう命令しました。
それに反対したひとは、ろうやに入れられたり、ころされてしまうようになりました。
でも、王さまはひとりだけ、ずるをしていました。
こっそり、スノーフレークスをお城にもってかえっていたのです。
ひとりじめしたスノーフレークスは地下室にうえて、つかまえてきた神さまにお世話をさせました。
こっそり、たくさんお薬を作って、自分の兵隊さんだけにあげました。
そうして、ユキマイや、近くの国をみんな、のっとってしまったのです。
王さまは、ぜんぶの国をひとつにして、ユイメイ帝国、と名前をつけました。
そして、国のひとたちからいっぱいお金を集めて、こんどは海の向こう、もっともっとたくさんの国をのっとろう、そう考えはじめたのです。
* * * * *
でも、悪いことはできないもの。
やがて、王さまのむちゃに怒ったみんなが、反乱をおこして王さまをつかまえます。
そして、つかまっていた神さまを、地下室からだしてあげました。
神さまはたいそう喜びましたが、何年も閉じ込められて、とても弱っていました。
そして、ざんねんなことに、数年後に亡くなってしまったのです。
神さまのおはかには、たくさん、たくさんのスノーフレークスがさきみだれました。
しかし、それからスノーフレークスは、どこにもさかなくなってしまいました。
もしかして、神さまのばちが当たったのでしょうか。
王さまのいたもと・イメイの土地は、すぐ後に海に沈んでしまいました。
かつてのユキマイの土地も、むりやりにたくさんの野菜を作らせられつづけて、つかれてしまったのでしょう。やがて一面、砂漠になってしまいました。
* * * * *
こうしてユイメイ帝国は、地上からなくなってしまったのでした。
そこに住んでいたひとたちは、あるいはもといた国に帰り、あるいは心やさしい公子さまのお船に乗って海を渡り、あたらしい国でくらすようになったのでした。
――ユキマイとイメイとスノーフレークスのおはなし おしまい――
(明明書房『世界の歴史・神話I-文明のまほろば-』より引用)
保護者の方々へ:
これは、朱鳥国建国についての伝承物語です。
古ユキマイ共和国の建国者であるサクレア王は、ユキマイ平原の凍土や、スノーフレークスをはじめとした薬草類を活用する画期的な方法を発案、実用化しました。そのため、豊穣神の転生として当時の人々に広く敬われました。
偉名国の二代目国王、偉名王はサクレア王を自国に連行し、その技術を提供させるとともに、スノーフレークスを独占し、軍事力、経済力による大陸統一を行いました。
偉名国が民衆の反乱と気候変動によって滅亡したさい、七瀬家の公子であった奈々希が葦原島へと民衆を導き、朱鳥国を建国したいきさつまでが描かれています。
ユキマイ平原の砂漠化とイメイ半島の海没は、地球規模の急激な温暖化によるものですが、神さまを無理やり閉じ込めたり、反対する人を厳しく処罰したから、ばちが当たったのかな? と考えるお子さんの感性を大切に、いろいろお話をしてみてください。
こちらはもともと『咲也・此花STEPS!! シリーズ、第二巻の冒頭にいれるはずだった歴史物語』として書かれたものです。
実は、えせ童話集風そえがき部分でサラッと『ナナっちが朱鳥の建国王だった』と記述するのが一番の目的(爆)でしたが……
やっぱドあたまは軽いノリがいいのかなと考えたこと+直後の『サクレア物語』とダブるという理由から、泣く泣くけずりました。
しかしやっぱり、これがないとわかりづらいのでは、と思うようになりました。
ですが、構成はかえたくない(しおりがズレる)!
そのため、本格校正作業を始めた今、このような形で(1.5という位置づけ)復活させました。
毎月一本童話を書いてみるチャレンジが途切れかけたからというわけでは……い、いちおう、ないです(滝汗)
このさきどうにもならなくなったら、此花3の『エリカひめのおはなし』だけ抜き出して再投稿しようか……とも血迷いかけてますが、どちらにせよミス多いから見直し必須です。
VRものの書き溜めと此花校正、平行になってしまいましたが、どちらもやり遂げる所存です。いっこずつがんばります♪