表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
舞鶴怪談  作者: かわむら
19/20

対峙

午後6時。

千本松は港に着くと、パチンコ屋に急いだ。

古い知り合いに合うためだ。

あんな怪物から智恵美を救い出すために、用心して銃を持って行った方がいい。

会うべき相手は、金さえ出せば覚醒剤やヤバい道具を揃えて貸してくれる相手だ。

名前は花藤昇。札付きの悪だ。 

そいつはタバコを吸いながら、余裕の態度で打っていた。

千本松の姿を見て、顔をこっちに向けてきた。

「よお、千本松。またヤクを買いにきたのか?」

「今日は違う。実はな、銃がいるんだ」

「銃?」

「そうだ、銃だ。素人でも簡単に扱えるのがいい」

「いつもは覚醒剤しか買わねえのに、どうしたんだ?」

「理由は聞くな。ちゃんと案内してくれるんだろうな?」

「まあ、金が必要だな」

千本松は財布から、十万円を出した。

「少ねえぜ。十万で買えると思ってるのか?」

仕方なく、千本松はさらに財布から五万円を出した。

「もう財布がカラだ。これ以上は出せねえ」

花藤は千本松から五万を受けとると、自分の財布にしまった。

「お前にはガキの時から色々助けてもらったしな。15万に負けとくよ」

「早く案内してくれ。急いでるんだ」

「よっぽどの急用らしいな」


    ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


千本松は花藤に連れられ、近くのバーまできた。

バーの地下まで降りて行くと、一人でカクテルを飲んでる老人の所まで連れられた。

「こいつがチャカを買いたがってます」

花藤は12万を、老人に手渡した。

残りの三万は、仲介手数料だ。

「おっちゃん、銃くれ、銃」

千本松は待ちきれない様子だ。

老人はスーツケースを開けると千本松に、38口径の拳銃と弾8発を渡した。

「坊や、試し射ちしてみるか?」

「いや、急がないと人が死ぬんだ」

千本松は拳銃に弾を装填すると、バーを出た。

もはや、一秒の遅れも許されない。


     ― ― ― ― ― ― ― ―


20時。

辺りは日が沈んで、真っ暗になっていた。

千本松は車を運転して、地蔵が祀られている場所までたどり着いた。

トランクから、魚網に入れた地蔵の6つの首を取り出した。

これでいつでも智恵美と交換出来るが、奴らはまだ姿を現せていない。

約束は今夜までのはずだ。

なかなか現れない地蔵に、千本松はいら立った。

「おい、姿を現せ、怪物どもが!お前らの首はここにあるぜ!

首はいらねえのか!?いらねえのなら、また捨てるぜ!

それでもいいのか?!」

大声で周辺に怒鳴ると、岩陰から足音が聞こえてきた。

奴らに違いない。

暗闇から、6体の地蔵が歩いてきた。

その内の池田の地蔵と山田の地蔵が、気絶してるらしい智恵美の手足を持って運んできた。

6体が、千本松の近くまでやってきた。

「智恵美に何をしたんだ?!」

「安心して。この女は眠っているだけよ。」

真衣地蔵が説明した。

「どうやら智恵美は無事なようだな。首はここにある。智恵美と交換だ」

千本松は首を地蔵によく見えるよう、高く持ち上げた。

「さっさと首を渡しなよ」

真衣の地蔵が言う。

「そっちこそ、智恵美を返せよ!智恵美を渡さない限り、首は渡さねえ!」

「あーら、随分威勢がいいじゃない?

あんたがあたしらに命令出来る立場だと思ってんの?」

真衣の頭の地蔵は、池田の頭の地蔵に向けて手を上げた。

池田地蔵は、持っていた智恵美の体を地面に下ろすと首をつかんだ。 

「何をするんだ?」

「あたしの命令一つで、智恵美の首の骨をへし折る。それでもいいの?」

「やめろ!お前らの勝ちだ!首は大人しく渡す!だから智恵美には手を触れるな!」

弱腰になった千本松は、首の入った魚網を地蔵に向かって放り投げた。

すると地蔵たちはゆっくりと、魚網からそれぞれの頭をつかみ出した。

どれも似たように見えるが、一体ずつ違うものらしい。

その一連の地蔵たちの行動を、千本松は荒い呼吸で見守った。

要は、智恵美を返してくれさえすればいい。

それ以上は、深追いしない。

次に千本松が見た光景は、異様だった。

地蔵たちは、今自分が載っけている人間の首を外したのだ。 

元の石の頭と交換するために。

真衣、池田、悦子、三浦、山田、真知子の頭部が地面にボテッと転がった。

人間の頭部と入れ替えに、地蔵たちは石の頭をつかみ、首の上に置いた。

すると、チェーンソーで切った石の頭は、まるで最初から切っていないかのように、ピッタリと首にくっついてしまったのだ。

千本松はホラー映画を、見ている臨場感に襲われた。

だがここで、ビビる分けにはいかない。

「約束は果たしたぞ。智恵美はもらって帰るからな!」

一秒でも早くこの場から去りたい千本松は、気を失っている智恵美を、お姫様だっこして車に戻った。

「そうはさせるか!貴様には我々を愚弄(ぐろう)してくれた礼をするぞ!」

後ろから地蔵の声が聞こえたが、振り返るつもりはない。

やはり、俺を殺すつもりだったか。

千本松は助手席に智恵美を乗せると、車をダッシュさせた。

すぐに脱出出来るよう、エンジンは切ってなかったのだ。

しかし、地蔵たちに追いつかれてしまった。

その内の一体が、ボンネットの上に上がってきた。

スタントマン顔負けでしがみつく地蔵は、フロントガラスに怒りの鉄拳をかましてきた。

フロントガラスに穴が開き、地蔵の手が千本松の肩をつかんだ。

何とかして、この化け物を振り落とさねば!

千本松は高速のまま、車をスピンさせた。

フロントガラスに鉄拳で穴を開けた地蔵は、道路に降り落ちてしまった。

道路に転がる地蔵を、千本松はバックミラーで確認した。

もう、あの化け物地蔵は振り切った。

これで、ひと安心だ。

俺はあいつらに、勝利したんだ!

いつの間にか、千本松は笑みを浮かべていた。

助手席の智恵美が、「うーん」と声を出して意識が戻った。

「智恵美!良かった、目が覚めたか!?」

喜ぶ千本松。

目はつむったままだが、智恵美はシートにもたれかかった。

「おい、智恵美!奴らに何かされなかったか?傷とかないか?!」

気づかう千本松は、智恵美が目を開けたのを見た。

その目は、いつもの智恵美の目ではなかった。

智恵美の目は、赤色に染まっていたのだ。

「お前を殺す!」

智恵美は男の声でしゃべり、運転している千本松の首を絞めてきた。

「うげええあえ!」

智恵美の力は、とても女の力と思えない。

「俺を殺したら、お前も死ぬぞ!」

猛スピードで逃げてるのに、首を絞めるなんて自殺行為だ。

千本松は片方の腕で、智恵美の手をつかんだ。

智恵美はものすごい形相で、首を絞めている。

いつもは剛力彩芽みたいなかわいい智恵美が、恐ろしい顔に変貌(へんぼう)しているのだ。

千本松の意識は遠くなり、ハンドルから手を放してしまった。

その途端、車はガードレールに激突した。

衝撃で智恵美は千本松から手を放し、フロントガラスに顔面をぶつけた。

フロントガラスがひび割れ、智恵美の顔は血だらけになった。

意識が朦朧(もうろう)とする中、千本松は車体が傾いているのに気づいた。

窓の外を見ると、ガードレールを突き破った車体は、片輪が崖からはみ出していたのだ。

このままでは落ちるし、バランスは非常に悪い。

崖の下は磯になっており、岩場に波が押し寄せている。

落ちれば、死ぬか重傷だ。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ