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舞鶴怪談  作者: かわむら
14/20

地蔵の恐怖

その日の深夜0時・・・。

池田は蒸し暑い夜、なかなか寝つけなかった。

生まれ故郷である舞鶴を捨てるかどうかで、悩んでいたのだ。

いくら故郷と言えど、命には代えられない。

兄が大阪市内で働いている。

しばらく、兄の所に厄介になるとするか。

暴力団が諦めるまでの、辛抱だ。

明日は荷物をまとめ、舞鶴を出よう。

そう思っていた時、玄関のチャイムが鳴った。

こんな夜遅くに、誰なんだ?

池田はふと、ヤクザかも知れないと頭に浮かんだ。

くそ、真衣の次はこの俺か?

池田は台所から、包丁をつかんだ。

俺の首をそう易々と、差し出すとでも思ったのか?

玄関まで行くと、2度目のチャイムが鳴った。

「どなたですか、こんな時間に!」

玄関は閉じたまま、池田は聞いた。

「あたしよ、真衣よ」

真衣が生きている!

今のは確かに真衣の声だ!

「真衣~?!生きていたのか?!」

「早く開けてよ」

池田は大喜びで、ロックを外すと玄関を開けた。

そこには、誰もいなかった。

おかしいな、ちゃんと真衣の声が聞こえたのに。

「おい、真衣!どこにいるんだ?!」

池田は辺りを見回した。

「ここよ。こっちへきて」

付近の雑木林から、真衣の声が響いた。

「真衣?!かくれんぼのつもりか?!出てこいよ!」

池田は雑木林に入った。

真っ暗で、真衣がどこにいるのかも見当がつかない。

「こっちよ」

暗闇から、真衣の声が響く。

「真衣!いい加減にしろ!姿を見せろ!」

どんどん奥へ入っていった池田は、何か小人の集団に囲まれているのが分かった。

真っ暗でその小人が誰なのかも、分からない。

「死ねよ」

真衣の声が聞こえ、池田は首を刃物で斬られて死んだ。


      ― ― ― ― ― ― ― ― ―


明くる朝。

真衣に続き、池田の首なし死体が犬を散歩中の主婦に発見され、大騒ぎになった。

報道関係者が次々に来舞し、舞鶴の人口は一時的に増える事になった。

舞鶴で事件が連発するのは、報道関係者にとって格好のエサだ。

何しろ、暴力団死体遺棄、重要文化財破壊、首なし死体が二件。

これだけ短期間に事件・事故が連続して起きる市は珍しい。

新聞や写真週刊誌の一面には、首を切られたお地蔵さんのタタリか?との見出しが付けられた。

舞鶴市内では登下校中の児童を親が過剰なまでに保護し、夜になると明かりはバッサリと消え、店は早仕舞いを余儀なくされた。

舞鶴はまるで、夜間外出禁止令まで出されたかのようになってしまった。

今、舞鶴が日本中の噂の的となっていた。


    ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


悦子の家は、料亭をやっていた。

めっきり夜は人がうろつかないようになってしまったので、商売上がったりだ。

舞鶴市内全体が、自粛ムードになっている。

父母が経営している料亭も客はゼロになり、何もすることがない。

いつもならこの時間、悦子は店を手伝い、オーダーを取っている。

客足のない店内で悦子は客席に座り、テレビを眺めていた。

棚のテレビは、ニュースを放送していた。

「先日、舞鶴沖で海に浮かんでいた男性の身元が判明しました。

男性の住所氏名は、舞鶴市岩崎7番地1、大塚精二さん(41)。

大塚さんは京都市に本部を置く指定暴力団、京浜会の所属である事が分かりました。

現在、京浜会から一切コメントはありません。

警察では大塚さんが、深夜何かのトラブルに巻き込まれたとして、捜査を続けています」

悦子の顔は、青ざめた。

やはり、暴力団だった。

それも昨今殺しで世間を騒がしている京浜会所属とは。

京浜会のヤクザを殺したのなら、報復は確実だ。

真衣も池田も、京浜会の奴らに殺されたに違いない。

それにしても首を切り取るなんて、残虐で手が混んでいる。

悦子は席を立ち、部屋へ戻ろうとした。

「えっちゃん、どこへ行くの?」

母が呼び止める。

「どうせ一晩中待ってても、客はこない」

悦子は自室へ戻ると、仲間のリーダー的存在である千本松に電話した。

『どうしたんだ?』

ケータイから、千本松の声が聞こえた。

「ニュース見た?あの男、やっぱり暴力団だったんだよ」

『そのニュースなら、俺もさっき見たよ』

「今後はどうするつもり?首を取りに来てくださいって、待ってるの?!」

『考えすぎだ』

「考えすぎ?あんたの方こそ、思慮が浅すぎ!」

 『怒鳴るなよ。それについては、皆で談合し合おう。

明日、いつもの場所で合うように俺から連絡つけとくよ』


    ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


また「洞穴」に、皆が集まった。

誰もが、暗い表情だ。

真衣に続き、池田までも首を切られるとは。

皆、明日は我が身なのかも知れないと、恐怖に怯えている。

「皆、辛いだろうが池田が殺されたのは事実だ。

またしても首を切り取られているという事は、同一犯だ。

京浜会の奴らに違いない」

重苦しい雰囲気の中、千本松がしゃべった。

「京浜会って何なんだよ?」と山田。

「京都市の暴力団だ。密輸、覚醒剤、人身売買、企業恐喝、ありとあらゆる悪事に手を染めている。

そいつらは池田の住所を、知っていた。

もう俺達全員の住所は知られている、と考えた方がいい。

このままでは、俺達全員の首が無くなる」

千本松が説明した。

「ねえ、警察に本当の事を言って保護してもらう、のはどう?」と真知子。

「ヤクザを轢き殺しましたって、正直に言うのかい?

そんなに手錠をかけられたいのか?」と三浦。

「死ぬよりマシよ」

「それは絶対にダメだ。しゃべったら、俺が殺すぞ」と山田。

「今、舞鶴を出れば私は怪しいです、って警察に言ってるようなモンだろ。余計、怪しまれるぞ」

千本松が威圧的に言った。

誰も千本松に反論する者はいない。

テーブルの下では、三浦と悦子が固く手を握り合っていた。

皆には内緒で、三浦と悦子は舞鶴を脱出するつもりだった。

警察に疑われようとも、死ぬつもりはない。








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