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舞鶴怪談  作者: かわむら
12/20

最初の犠牲者

早朝からダイビングツアーの船が、ダイビングスポットを目指して潮風を切る。

本当にスキューバダイビングをするには、うってつけの晴天だ。

狭い船にツアー客21人が、ひしめき合っていた。

「えー、本日はお日柄もよろしいようで。

皆様、那覇ダイビングホールディングス主催のダイビングツアーにご応募頂き、ありがとうございます。 自己紹介しますが、私がチーフインストラクターの金丸と申します」

金丸は一礼した。

「搭乗員の紹介をしておきます。

運転しているのが、高橋真由子。

副インストラクターが、そこにいる日影昌道。

この三人が皆様を快適に、石垣島の青い海底へ、案内させて頂きます。

私と日影が皆さんと一緒に潜り、万一の場合は誘導します。

高橋は船上で、皆さんが上がるのを手伝います。

海底に着きましたら、皆さんで一緒に記念撮影を行いますのでお忘れなく。

それが終わったら、各自バディと一緒に自由行動の時間です。

潜水の時間は、30分です。

時間は厳守でお願いします。

船に戻られましたら、私が順番に点呼していきます。

呼ばれた方は、はいと返事をお願いします。

間違っても、皆さんの一人たりとも置いてきぼりにしたりしませんので、どうか安心してダイビングをお楽しみ下さい」

21人のツアー客は笑った。

インストラクターの金丸が説明している間、智恵美はそっちのけで機材の点検をしていた。

千本松に誘われてスキューバダイビングを始めたが、今ではすっかり(とりこ)になってしまった。

何より海で泳ぐのは、日頃のストレスを発散させてくれる。

「皆さん、ダイビングスポットに、着きました!ご準備願います!」

インストラクターの指示通り、ツアー客は潜水の準備を始めた。

二人一組のバディシステムで行動するのがルールであるが、千本松は智恵美とバディを組み、機材を装着している。

「サメが出てきたらどうするの?」

智恵美が千本松のアクアラングを装着するのを手伝いながら、聞いた。

「じゃあ潜らなければいい。船で待ってろ。サメは船の上まで襲ってきたりしない、普通は」 

「異常なサメだったら、船上まで襲ってくるの?」

「ジョーズ並みのサメだったら、襲ってくるかも知れん」 

下らないお喋りをしてる間に、ツアー客のダイビングの準備が整った。

「では皆さん、ナイスダイブを。行ってらっしゃい」

運転手の高橋真由子が、船上からダイビングツアー客を、順番に

ダイブさせていく。

千本松と智恵美は、ほぼ一緒にジャンプして水中に潜った。

周りにはまだ、ダイビング客が水中でフィンキックしている。

千本松は智恵美に、親指を下に向けた。

下に潜ろう、の合図だ。

千本松、智恵美組が最初に海底目指し、下へ泳いで行く。

どんどん深く潜って行く最中、千本松は智恵美の前でカメラを構えた。

智恵美がピースサインをしている図を、撮った。

さらに深く潜って行くと、海底にたどり着いた。

石垣島の海らしく、珊瑚がまばゆいばかりだ。

珊瑚だけではない。

海底には、色々な魚がウヨウヨしている。

ツアー客が全員、海底に降り立った。

チーフインストラクターの金丸がカメラを構えると、21人全員の記念写真を撮った。

後はバディと共に、自由行動である。

智恵美が魚の集団と一緒に泳いでいる所を千本松が撮影した。

千本松がカメラを智恵美に渡した。

千本松は自分の方に指を二本向け、自分を撮れと合図している。

今度は智恵美がオーケーサインを出し、千本松を撮る番だ。

千本松は水中で、ガッツポーズを取った。

智恵美は水中で、千本松のガッツポーズをうまく撮影出来た。

二人は共に海底スルスレに泳ぎ、散歩を楽しんだ。

智恵美は砂から何かが、頭をだしているのを見た。

魚に詳しくないので、何の魚か分からない

近寄ると、それはギザギザの歯を持つウツボだった。

好奇心旺盛な智恵美は、砂から頭を覗かせているウツボに近づいた。

ウツボは智恵美に興味を持ったのか、全身を砂から出した。

ウツボは智恵美に撫でられているのが、気持ちいいみたいだ。

エビに逃げられた千本松、智恵美に向かった。

智恵美は恐ろしい面をしたウツボを手なづけ、ペットのように可愛がっているではないか。

千本松もウツボをよく見ようと近づいた時、まるで襲いかかろうと顔面まで大口を開けてきた。

ビックリした千本松はのけ反り、水中を一回転した。

水中を、千本松の気泡が大量に漂う。

ウツボは千本松を驚かせ、どこかへ泳いで消えてしまった。

智恵美が、千本松の顔を覗きこむ。

千本松はオーケーサインを出し、智恵美を安心させた。

回りを見ると、ツアー客が浮上し始めている。

千本松はダイバーウォッチを見た。

早くも30分、経っているではないか。

千本松は智恵美に浮上しようと、親指を上に立てた。

智恵美がうなずき、二人は海上に向かって泳いだ。

千本松、智恵美の二人が一番最後に浮上してきたが、ちゃんと船は待っていてくれた。

「お帰りなさい、お疲れさま」

船に近づく二人に、高橋真由子は浮き輪を投げた。


    ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


一端、船は港へ戻った。

昼飯をはさみ、午後は別の場所でのダイビングである。

そこのダイバースポットでも、千本松と智恵美は海底散歩を満喫した。

高い金を払った価値がある。


       ― ― ― ― ― ― 



夜、智恵美はホテルの売店へ出向いた。

真衣に石垣島に行った時はお土産を買ってかえると、約束したからだ。

しかし、どれを買って帰ればいいか分からない。

千本松に聞こうにも、ぐっすり寝てしまっている。

適当に買って、真衣に後から文句を言われたくない。

智恵美は本人に聞くために、真衣のiPhoneに電話した。

真衣は新しくiPhoneを、買ったらしい。

「もしもし真衣?今、売店の所にいるんだけど。

あんたの土産、何にしたらいいか分かんなくて。どんなのがいい?」

『石垣島でしか手に入らないような、レアなのにして』

「もっと具体的に決めてよ」

智恵美はシーサーの置物を、手に取った。

これは、自分の土産にしよう。

『食品にして。沖縄らしいやつ』

「シークワーサーって、美味しいみたい」

智恵美は主人公たちが、シークワーサーを飲んでいた映画を思い出した。

『シークワーサー?』

「柑橘類のジュースよ」

『美味しい?』

「美味しいって思うけど・・・」

『じゃあ、それにして』


      ― ― ― ― ― ― ― ― ―


夕方から、かなり激しく雷雨が降り続いていた。

お地蔵さんが立っていた場所は、黄色のテープで囲まれて立ち入り禁止状態になっている。

何度か雷が落ち、首のない地蔵の周辺を照らした。

次に耳をつんざくような雷鳴と共に雷が落ちて回りを照らした時、お地蔵さんたちの姿は無かった。


      ― ― ― ― ― ― ― ― ―


真衣は聞いていたCDのヘッドフォンを外すと、ベッドに寝っ転がった。

大雨の音で、外はかなりうるさい。

雨だけでも騒々しいのに、時たま雷が落ち、一瞬だが明るくなった。

こんな調子で、寝れるのだろうか。

いやでも寝てやる。

暑苦しいので、エアコンの電源を入れた。

これで快眠出来ればいいが。

そんな事を考えている内に、真衣はウトウトし始めた。

ガサゴソという音で、ふいに真衣は目を覚ました。

部屋の中に、誰かいる!

照明は消してあるので、誰なのか分からない。

一人ではなく、複数の侵入者が、寝ているベッドを取り囲んでいるのだ。

そいつらは、子供だった。

小学校2~3年生の子供だ。

真衣は恐ろしくて、口を開くことも出来なかった。

ちゃんと玄関の鍵は、閉めてあるのに。

その子供たちには、頭があるようには見えなかった。

首から上だけが、見えないのだ。

その時雷が落ち、凄まじい音と共に部屋が明るくなった。

真衣は部屋の中の現状を、恐怖と一緒に理解した。

先日首を切り倒した6体の地蔵が、ベッドを囲んでいたのだ。

真衣は必死になって、抵抗した。

しかし石で出来ている地蔵の手は、ビクともしない。

一体の地蔵が真衣の口をふさいだ。

片方の腕は、包丁を握っている。

口を押さえつけられ、悲鳴が出せない。

真衣の口を押さえている地蔵は、容赦なく包丁を振り下ろした。

ボキッ。

鈍い音が響くと、壁に鮮血が飛びちった。


       ― ― ― ― ― ― ― ― 

明くる朝。

西原真衣の家では、いつもと同じ朝が始まっていた。

真衣の父親と弟は、朝ごはんを食べて元気よく会社と学校へ出発した。

娘の真衣は、いつも寝坊だ。

母親はいつものごとく寝坊していると思い、二階に上がって娘を

起こそうとした。

部屋の前で、ノックしてみる。

「真衣?ご飯よ」

いつものように返事はない。

母親は娘を叩き起こそうと、部屋のドアを開けた。

その途端、別世界に移動したかのように感じた。

部屋の壁は、赤色に染まっていたからだ。

母親はペンキでも塗ったのかと思った。

ベッドには、首のない死体が寝ていた。

母親は気絶して、床に倒れた。







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