表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/23

7. 暗殺教団

 繰り返しになるが、現在この銀河系は切実な神不足だ。本来100人居るはずの中級神は90人くらいしか残っていない。下級神も1万人くらい減らされてしまった。もっともこちらは全体で100万人くらいだから、割合で言えば1パーセント程度だが、それでもその数だけ神の管理からはずれた惑星があるわけだ。すべて超越者の仕業である。

 これをカバーするため、中級神は少しずつ個々の管理範囲を広げ、かつ本来は下級神の仕事である惑星の管理も兼任している。上級神であるリリ様もいくつかの惑星の神を兼任されている様な状況である。そこまでしてもまだ数千の惑星が惑星カーニンの様に神の加護の無い状態で放置されている状況なのだ。彗星や小惑星の除去の依頼が回って来くるくらいでは文句は言えない。除去の依頼を出した惑星の神からお礼にとその惑星の料理をご馳走して貰えることも多いしね(役得、役得)。どうやら私への報酬は食べ物が一番との噂が神々の間で広まっているらしい。


 5日後に(ようや)く惑星カーニンを再訪することが出来た。出かける前少し用事があって遅くなった。もう昼前だ。さっそくドリスさんに念話で都合を確認する。今は以前いた村から移動して私も訪れた精霊の神殿の方に居るらしい。それは都合が良い、あそこなら私が訪問しても拒否されることは無いだろう。問題は精霊様にお会いできるかどうかなのだが、念話で確認すると精霊様は会うかどうか迷っているらしい。


 精霊様の神殿の上空に瞬間移動した。転移してから周りを見て驚いた、神殿前の広場に多くの兵が居る。まあ、すぐに戦いが始まるような殺気立った雰囲気ではないのでホッとする。私が神殿前に降りると、兵達が一斉に私に向かって敬礼した。すぐに隊長らしき人が私の前に駆けて来て(ひざまず)く。


 「女神様、お初にお目にかかります。私はグリアス国王よりドリス様と精霊様の護衛の任を迎せつかりましたラザロと申します。」


 「それはご苦労様です。それにしても沢山の兵ですね。」


 「実は預言者ドリス様を異端者と見なす教団が、ドリス様と精霊様の暗殺を企てているとの情報を掴んだのです。」


 「状況は分かりました。それでドリスさん達はどうしていますか?」


 「ドリス様には、当面この神殿から出ない様にお願いしております。」


 なるほど神殿に軟禁状態ということか。とりあえずは仕方ないがいつまでも命を狙われる状態が続くのは問題だな、何とかしてあげないと。


 「分かりました。とりあえずドリスさんにお会いできますか?」


 「もちろんでございます。ご案内させていただきます。」


 そういってラザロさんは私を神殿の中に導き入れた。ドリスさんの部屋の扉の両側にも兵士がふたり立っている。扉を開け中に入る。広い部屋だ、豪華と言って良いだろう、家具や調度品が古びてなければとの条件が付くが。


「女神様!」


 とドリスさんがソファーから立ち上がる。何とカイちゃんとサラちゃんも一緒だ。


「こんにちは。お元気ですか?」


「はい、皆様に守っていただいておりますので。」


「女神様もここで暮らすんですか?」


 とカイちゃんが聞いてくる。私も暗殺者から身を守るためにここに来たのかと思っている様だ。


「いいえ、私はドリスさんと精霊様に用があって来たの。」


「暗殺者は怖くないんですか?」


「大丈夫よ。私は強いもの。」


 と返す。実際私を殺すのは不可能に近い。どうも最近は "私" というものの中心が身体から魂の方に移った気がしているのだ。その所為か身体が寝ている間も意識がある。この状態だと、たとえ身体が大きく傷ついても---極端な例として頭を吹き飛ばされても---意識をなくすことは無いだろう。そして意識があれば身体の欠損など一瞬で修復可能だ。我ながら立派な人外である。以前アレフさん達がカトリーさんを救出するために睡眠ガスを使った時、周りの人々が次々と倒れて行く中で私だけ平気だったのはこの前兆だったと思っている。


 カイちゃん、サラちゃんにここでの暮らしについて尋ねる。この神殿の子供はカイちゃんとサラちゃんのふたりだけらしい。この前奴隷狩りの連中に襲われたと思ったら、今度は暗殺者の話である。子供にとっては大変な負担だろうと思う。今日はドリスさんが勉強を教えてくれていたそうだ。


 しばらく4人で話をしていると神殿長のカルロスさんが部屋を訪れた。昼食のお誘いである。今日はお弁当を持参したのだが、この惑星の料理にも興味がある。お弁当は収納魔法で亜空間に入れておけば傷まないからとお誘いに乗る。カイちゃん、サラちゃんも一緒に食べるらしい。

 5人で食堂に移動する。目の前に運ばれてくる美味しそうな料理を早く食べたいという衝動と女神としての威厳を保たねばという理性が私の中でせめぎ会う。最初に何かのスープを頂く、上品に上品にと心の中で自分で自分に声を掛ける。いや、この星のテーブルマナーなんか知らないから、どうするのが正しいのか分からないけれど。まあいいやと、自分なりに上品に振る舞う。

 そんなことを考えていると、突然サラちゃんが椅子から崩れ落ちた。床に倒れ込んで苦しそうにしている。あわてて駆け寄るのと、サラちゃんが食べたものを嘔吐するのが同時だった。嘔吐したものに沢山の血が混じっている。これは毒?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ