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3. カイちゃんとサラちゃん

「あ、あなたは精霊様でしょうか?」


 良かったパルさんからこの惑星の言語の知識を頭にコピーさせてもらっていたお蔭で相手の言っていることが分かる。 それにしても、精霊? なんだろう? 地球で読んだラノベには出て来たけど惑星ルーテシアでは聞いたことが無い。さてどう答えようか? 私の魔力量を見た後でただの人間というのは通用しないだろうな。ただ正直に神だと言うのはやめた方が良いだろう、神に見捨てられた惑星で余計な期待を持たせてしまうとまずい。


「私はただの使いです。お騒がせしてすみません、人を探しているだけなので気にしないで下さい。」

 

「なんと精霊様の御使い様でございましたか。失礼しました。」

 

 いや、私は精霊の使いなんて言ってないんだけど。まあせっかく勘違いしてくれたんだ、否定も肯定もしないでおこう。


「ホサールという方を探しているのですがご存じありませんか? 大魔導士パル様の弟子だった人です。」


「パル様の弟子ですか。あの方が弟子を取っていたとは知りませんでした。お役に立てず申し訳ありません。」


「いえ、大丈夫です気にしないで下さい。ところで今年はずいぶん豊作の様ですね。」


 と私は周りを見渡しながら言う。


「はい、これも精霊様のお蔭でございます。 精霊様に私達の感謝をお伝えください。」


 ....ごめん、精霊様には面識が無いので伝えられません。


「豊作なのはここだけでは無いのですね。」


「今年についてはまだ分かりませんが、この数年はどの国も豊作が続いていると聞いております。」


「それは何よりです。」


 本当に良いことずくめなのだが、なぜだ? ここは神に見捨てられた惑星だ、自然災害や異常気象が続いて凶作が続いていると思っていたのだが。いい方向に予想が外れている。


 それではと挨拶して私は次の場所に瞬間移動する。ちなみに先ほどの女性の名前はトリエンさんで、グリアス王国の筆頭魔法使いらしい。瞬間移動の魔法を使っていたし、かなり優秀な魔法使いの様だ。私もトモミと名前だけ名乗っておいた。

 精霊様とは何者なのだろう。トリエンさんは豊作なのは精霊様のお蔭と言っていた。ということは、精霊様が神に変わってこの惑星を安定させてくれているのか。だとすると色々な意味で一度会ってみなければなるまい。ホサールさんを探すついでに精霊様とやらも探すことにしよう。きっと大きな魔力を持っているだろうから魔力パターンが分からなくても探査魔法で見つけられるだろう。

 それにしてもパルさんの話とずいぶん違う。この惑星から神が居なくなったのが約100年前、もちろん超越者の仕業だ。それ以降自然災害や異常気象が頻発しパルさんがこの惑星で生活している頃にはかなり悲惨な状況になっていたらしい。パルさんは自分の魔力で周りの地域を災害から守って人々から慕われていたそうだが、それでも惑星全体からみれば小さなあがきに過ぎなかったらしい。


 次の場所に到着して辺りを見渡す。ここは大きな森の上空の様だ。1キロメートル位離れたところに神殿の様な大きな建物が見える。建物から黒い煙が上がっている。火事か? と考えていた時、突然「キャー」という甲高い悲鳴が聞こえた。ここは森の中なので見通しが悪い。私は声のした方向に空中を移動する。

 見えた、小柄な人族がふたり、5~6人の武器を手に持った同じく人族の男達に追いかけられている。逃げている小柄な人族は子供かもしれないが、追いかけている方はどう見ても保護者という感じではない。一児の母としては見過ごせないよね。私は瞬間移動で逃げている人族を近くに引き寄せた。


 << 静かにしてね。>>


 口の前に人差し指を立てながら念話で呼びかける。近くで見るとやはり子供の様だ。男達は追っかけていた獲物がいきなり消えたものだから、とまどってあたりをキョロキョロ見渡しているが、まさか上空にいるとは気付かない。しばらくすると諦めたのかどこかに去って行った。

 それを見定めて、私はゆっくりと地面に降りた。子供達は驚きの余り座り込んでいる。ひとりは7~8歳くらいだろうか、もうひとりはもっと幼い、ふたりとも女の子だ。静かだったのは私の念話の所為ではなく、驚きの余り言葉が出なかっただけかもしれない。


「大丈夫? 怪我はない?」


「.........」


 相変わらず返事はない、口をポカンと開けたまま私を見つめているだけだ。 その内、ひとりが思い切った様に口を開いた。


「魔法使い様ですか?」


「えっ、まあそんなものね。」


 と返す。幼い方の子が足に怪我をして血が流れているのに気付いたので、私は手を翳して怪我を直し、血の汚れも取り除いてあげた。ちなみに私は魔力遮断結界を張っている時は杖を通さないと魔法が使えないが、直接手で触れたり距離が近ければ魔法の行使は可能だ。子供達は目を丸くして見つめている。年上の子がカイ、下の子がサラという名前らしい。


「よかったらあなたたちの家まで送っていくわよ。」


 と私が言うと、最初に話しかけて来た子が思い出した様に訴えた。


「魔法使い様、精霊の神殿の人達を助けて! 奴隷狩りの人達に襲われているんです。私達は逃げる様に言われたんですけど、見つかってしまって追われていたんです。」


 と真剣な表情で言う。どうしよう。子供達の言うことを鵜呑みにするわけにもいかない、近づいて状況を良く見てから判断するしかないだろう。問題はこの子達をどうするかだが、ここに残しておくとまたさっきの連中に狙われるかもしれない。連れて行こう。私と一緒に居る以上に安全な場所はないだろうしね。

 カイちゃんの案内で上空から先ほど見えた神殿らしき建物に近づく。神官服の様なものを来た集団と汚れた服を着た集団が争っている。火災も発生している様だ。あれは先ほどの子供達を追いかけていた連中の恰好に似ているな。上空から近づく私達には誰も気づかない。空なんて見ている余裕はないものね。距離が縮まると声が聞こえてくる。


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