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2. 惑星カーニン

 翌朝、朝食を食べた後、私はタロウをネスレさんに託し惑星ツエルクへ瞬間移動した。亜神仲間のパルさんから私にお願いがあると言うのだ。彼女の神殿に到着すると、巫女さん達に案内され女神の部屋へ通される。そこではパルさんがアバター姿で私の到着を待っていた。


 << おはようございます。>>


 と私が挨拶すると、


 << トモミさん! お待ちしておりました。よく来てくれましたね。>>


 と嬉しそうに返してくれる。パルさんのアバターは30歳くらいの上品そうなご婦人の姿だ。蛇足だが本来惑星を身体としているパルさんに性別は無い。だからアバターを作る時も男女どちらでも良いはずであるが、私以外の神は前世の記憶を持っているので前世と同じ性別を選択する神が多い。もちろんパルさんも前世は女性だった。

 ちなみに年齢は私の方が上なのだが、パルさんは前世での数百年分の記憶を持っており私は先輩として認識している。ちなみに神と神の会話は基本的に念話で行う。これは言語が異なっても念話なら意志疎通が可能だからだ。


 << それで、お願いというのは何でしょうか? >>


 という私の問いに対するパルさんの回答を要約すると、前世でパルさんがいた惑星カーニンでの知り合いをひとりこの惑星に連れて来て欲しいらしい。惑星カーニンは神のいない、いわゆる見捨てられた惑星であり、パルさんの庇護が無い今、向うでの生活は厳しいものになっている可能性が高いとのこと。個人的なお願いであり断っても良いのだが、数少ない亜神仲間の願いをすげなく断るのは気が引ける。結局その人がこちらの惑星に来ることを望むならば、という条件で引き受けることにした。

 ちなみに見捨てられた惑星と言うのは、まだ安定期に入っていない惑星でかつ神が不在のものである。安定期に入っていない惑星は火山活動や地震、異常気象が頻発する。そのため適切な神の管理が無ければせっかく文明を持つまで育てた人族も簡単に絶滅するのだ。もちろん神も好き好んで惑星を見捨てているのではない、先に述べたように超越者の所為で神の数が減り、派遣する神が居ないのである。

 パルさんは惑星カーニンで大魔導士と呼ばれていたらしい。その時、気まぐれでひとりの女の子を弟子として一緒に暮らしていたそうだ。もっともパルさんが惑星カーニンを去ってから10年以上経過しているから、女の子はもう大人になっているはずだ。それだけなら良いが、最悪の事態も想定しておいた方が良いかもしれない。


 そんなことを考え、少し嫌な予感を覚えながら惑星カーニンに瞬間移動した。到着したのは赤道付近の大陸の上空。自然災害や異常気象により荒れ果てた大地を予想していたが、眼下に見下ろす大地を見て拍子抜けした。豊かな緑の森が広がっているのだ。良い事なのだが不思議ではある。神に見捨てられた惑星、それも神が去ってから100年以上も経つ惑星とは思えない風景だ。まあ、たまたま自然災害の被害を免れている地域に降り立っただけかもしれないが。

 まあ、疑問ではあるがそのことは置いておく。まずはパルさんの依頼をこなすことにしよう。私はまず魔力遮断結界を解除する。これは私の多すぎる魔力量が人々に威圧感を与えるのを避けるために常時自分の周りに張っている結界だ。便利なのだが欠点として結界を張ったままでは魔法が使いにくいということがある。私が放出する魔力を結界が遮断してしまうからだ。対応としては、対象に直接触れることが出来るなら、接触部分から魔力を流し込むという方法がある。回復魔法ならこの方法が有効だ。もうひとつは魔法使いの杖を使う方法だ。魔力遮断結界は魔力は遮断するが物質は透過する。一方魔法使いの杖は魔力を流しやすい物質でできている。そのため私が杖を結界の外まで突出し、杖を通して魔力を放出することで魔法を使うことが出来る。

 私は通常この方法で魔法を行使しているが制約もある。余り強い魔力を流すと杖がもたないのだ。そのため強力な魔法を行使するときは結界を解除する必要がある。結界を解除すると周りの人に威圧感を与えるだけでなく、私の身体が光り輝いて見える様で非常に目立つのだが、このあたりに町や村はなさそうだから騒ぎにはならないだろう。パルさんに教えてもらった探査対象の女の子の魔力パターンを元に探査を行うがヒットしない。魔力が強くなった分探査範囲も広がっているので、この惑星なら瞬間移動しながら30回も探査魔法を使えば全域をカバーできるかな。

 そんなことを考えながら、次の探査場所に瞬間移動する。今度もヒットしない。それから場所変えながら探査魔法で探索を繰り返すがダメ。もうこの惑星の5分の1は捜索したと思う。次の場所は穀倉地帯の様だ、麦に似た植物が豊に実っている。もし惑星全体がこのくらい豊なら女の子をパルさんの惑星に連れて行く必要は無いのかもしれないと思う。この当たりには村や町もありそうなので、私は地上にある林の中に着陸した。ここなら木々の陰に隠れているから魔力遮断結界を解除しても目立たないだろう。再度探査魔法を使う。

 よし、次の場所と考えた瞬間、目の前に突然人が現れた。黒いローブを被り杖を持った高齢の女性だ。その女性は私を見るなり息を飲み固まった。心なしか全身が震えている様に見える。この様子には既視感がある。私はあわてて魔力遮断結界を張り直した。途端に相手の緊張が緩むのが分かった。 たぶんこの女性は私が探査魔法の為に大量の魔力を放出したのを感知して何事かと怪しんでやって来たのだろう。


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