閑話-3 リリ様視点
私の名はリリ、銀河系の上級神だ。私達が避難したこの次元には私達の銀河系以外の天体はないから、実質上全宇宙のトップといっても良いかもしれない。
だがそのことを誇るつもりは無い。かつて私は超越者に怯え自らの上級神としての責務を放棄して逃げ出したのだから。さらに超越者に追い詰められたあげく、目の前を通りかかったトモミさんの魂に相手の迷惑も考えず憑依してしまった。いくら追い詰められていたとはいえ上級神の私が人間の魂に憑依したのである。とんでもない無茶をしてしまったものだ。
その結果が今のトモミさんである。地球で人間としての人生を送るはずだった彼女であったが、今の彼女は既に人ではない。人を越えた存在、亜神となった。それだけではなく、彼女の魔力は私が彼女の魂から分離した後も増え続けている。理由は私にも分からない。魂の本質については我々神も良く知らないのだ。超越者なら知っているのかもしれないが...。いったい超越者とは何者なのか。私達の次元で何をしていたのか、今となっては謎のままだ。分かっていることは超越者とは私達の居た次元より高い次元から来た存在だということだけだ。超越者の来た次元とはどのようなものなのだろう。ひょっとしたら超越者と同じような存在が多数いる世界なのだろうか。あの様な常識外の存在が多数存在する世界など想像がつかない。とにかく私達の魂を創ったのは超越者だというのは間違いないだろう。私達は自分達の創造主に反乱を起こしたわけだ。しかし間違ったことをしたとは思っていない、超越者はそれだけのことをしてきたのだ。
超越者がこの銀河に残した傷跡は大きい。実に下級神1万人、中級神10人が超越者の手に掛かった。そして、これだけの神が居なくなればその加護を受けれなくなった人族の数は計り知れない。だからトモミさんが提供してくれた惑星安定用の魔道具はありがたかった。中級神の皆と喝采を唱えたものだ。お礼を言うとトモミさんは困ったように、
<< 私が作った訳ではありません。褒めるなら設計した人を褒めてあげて下さい。>>
と言う。だが神界では自分の管理する惑星の住人の成果は管理神の成果なのだ、その住人を褒めたいのであれば管理神が報いてやれば良いというのが常識である。よってこの魔道具はトモミさんの成果。本人は納得していない様であるが。
最近トモミさんの魂の魔力はついに中級神レベルまで達した様だ。あっと言う間に下級神を追い越してしまった。非常に興味深い。そのうち上級神である私と同レベルに成長するのかもしれない。それでもかまわない。彼女の性格を考えればたとえそうなったとしても神界にとっての脅威とはなりえないだろうから。ただ本人が下級神や中級神に昇進するのを固辞しているのは問題だ。神界のトップとしてはやはり秩序と規律を維持する必要があるのだ。例外を作るのは将来に禍根を残すことになりかねない。なんとか彼女を説得する機会があればと思っている。




