13. 魔道具設置
食事が終わると私とエリスさんで後片付けを行う。ドリスさんがあわてたように手伝いを申し出てくれた。カイちゃんとサラちゃんにはタロウの相手をしてもらう。お互い言葉は通じないだろうが、なんとタロウは念話が出来るのだ(エヘン)。もっとも不思議なことに念話をするにも語彙力は必要らしく、2歳児でも分かる言葉の範囲でしかやり取りできないが。
<< 女神様が皿洗いをするんですか!? >>
<< もちろん、私は主婦だもの。>>
と答えたもののドリスさんは大変驚いている様だ。女神のイメージを崩しちゃったかな。でも雑用を人に押し付けてふんぞり返っているのは性に合わないのだ。本当は料理も子育てもしたいが、この辺はエリスさんやネスレさんにお世話になっている。それでも家に帰れば家事もするし、子供の面倒も見る。妻として夫の相手もする(ふたり目も欲しいしね)。まあ、それ以外は好き勝手にやらせてもらってます。
翌朝、ドリスさんと一緒に惑星カーニンの神殿に戻る。惑星安定化の魔道具を設置しないといけないからね。カイちゃんとサラちゃんにはネスレさんと一緒にタロウの面倒を見てもらうことにした。やはり言葉が通じないと不自由だろうと思い惑星ルーテシアの言葉の知識をふたりの頭に入れてあげた。不要になったら消すこともできるからね。ドリスさんから「私にもお願いします」と言われたので同じ様にする。
神殿に着くとラザロさんが待っていた。パライカさんへの尋問から首謀者が分かったらしい。
「カルマルという悪名高い過激派教団のリーダーが首謀者と分かりました。」
「まあ、良く聞き出せましたね。それで、そのカルマルというのはどんな人なんですか?」
「一言で言うと、宗教団体とは名ばかりのテロリスト集団です。自分達の主張が受け入れられないとすぐにテロ行為を起こすので各国から指名手配されている人物です。」
おお、これは良いことを聞いた。これならカルマルさんを捕まえてどこか適切な国に引き渡せば解決だな。どこかの国の王様とかだったら捕まえたら戦争になりかねないものね。
「カルマルと言う人の居場所は分かっているのですか?」
「いえ、残念ながら。」
当然だよね。分かっていたら逮捕されているよ。指名手配されているのだから。
「その人の髪の毛や愛用していた持ち物は無いでしょうか? それがあれば居場所を突き止められるかもしれません。」
「申し訳ありません。関係部署に問い合わせてみます。」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね。」
ラザロさんが退室すると、私はドリスさんにロキさんを呼び出してもらう。今度は亜空間に来いとは言われなかった。
<< ロキさん、この惑星を安定させるための魔道具を設置したいのですが、どこかに魔力ライン網が密集している場所はないですかね。>>
<< それならこの神殿の地下がよいと思うぞ。>>
やはりそうか、予想通りだ。魔力ラインが密集している場所というのは神にとって一番惑星の情報が集まる場所なのだ。当然そこに神が顕現する頻度が高いはず。その場所が聖地となり後に神殿となったと考えれば納得がいく。惑星ルーテシアでもそうだったしね。
さっそく神殿地下の岩盤の一部を取り除き部屋を作る。部屋の床と壁は硬化した石材で作った。発光するようにしようかとも考えたが、ロキさんが光が苦手なのかもしれないと考えて止めた(ロキさんの亜空間は真っ暗だったしね)。その後ロキさん、ドリスさんと一緒に作成したばかりの部屋に瞬間移動した。暗いとドリスさんが怖いだろうと思い、光魔法で光球を作って天井付近に浮かべる。それから収納魔法で持ってきた魔道具を取り出し床に設置、魔力ライン網と接続した。これで準備は完了である。あとは内蔵されている魔晶石に魔力を注ぐだけだ。
<< ロキさん、よろしければ照明を消すことも可能ですがどうしましょうか? >>
<< このままで大丈夫じゃ。結界を張っておるからの。>>
結界? 光にすら結界を張る必要があるのか? まさかドラキュラじゃないよね。いや、それよりひどいか。ドラキュラは日光はだめでも蝋燭やランプみたいな人工の光は大丈夫だものね。
<< 分かりました。それではこのまま説明しますね。こちらが先ほど話した魔道具です。すでにこの惑星の魔力ライン網と繋いであります。後は表面にある魔晶石に魔力を注げば起動します。魔晶石に魔力を満タンに注げば1ヶ月程度は稼働するはずです。試してもらえますか? >>
<< 分かった。やってみよう。>>
と言うと、ロキさんは魔晶石に近づき魔力を注ぎ始めた。ただ、魔晶石に直接触れるのではなく手を翳しているだけである。直接接触する方が効率的なのだが何か理由があるのだろうか。
しばらくすると魔力がチャージされたみたいで魔道具が起動した。
そのまま魔晶石が満タンに成るまでチャージを続けてもらう。この魔道具に使われている魔晶石は惑星ルーテシアのものに比べて小さいので、昼前までには満タンになった。




