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12. 我家の夕食

 エリスさんに再度謝ってから次は子供部屋に向かう。乳母のネスレさんにお礼を言ってタロウを抱き上げる。タロウは今日も元気な様だ。タロウと一緒にハルちゃんの書斎を訪ね、今日の出来事と来客がある旨を伝える。ハルちゃんは「相変わらずお節介を焼くのが好きだね。」と笑っている。自分だって人のこと言えないじゃないかと思うが口には出さない。 

 

 エリスさんが夕食の準備が出来たと言ってくれたので、ドリスさん達を呼びに客室へ向かった。最初にドリスさんの部屋に行くとカイちゃん、サラちゃんもこちらに居た。知らない場所で自分達だけで部屋にいるのは不安だったのかもしれない。3人を案内しながら食堂に向かう。


「なんて言うか普通のお家なんですね。いえっ、私ったらなんて失礼なことを! 十分に立派なお屋敷なんですけど、今日伺った神殿のお部屋と比べてしまって。」


「こっちの方が好きなんです。広すぎてもお掃除が大変なだけだしね。あ、そうそう、ここでは家族とメイド長のエリスさん以外の使用人には私は普通の人間ということになっているので注意してね。カイちゃん、サラちゃんもよろしくね。」


「....分かりました、それではなんと及びすれば?」


「タチハでお願い。偽名だけどね」


「タチハ様ですね。」


「様もいらないわよ。」


「そんなわけにはいきません!」


「しかたないわね。 それで良いわ。」


 と話をしながら食堂に到着した。食堂にはすでに残りのメンバーが座っていた。ハルちゃんとタロウ、それにエリスさんである。エリスさんには一緒に食事をとってもらっているのだ。もう家族みたいなものだしね。最初は固辞されたのだが女神権限で押し通した。ちなみに住み込みで働いてもらっている使用人はエリスさんだけなので、夜には私達だけになる。正確にはエリスさん以外にも3交代で家の警備をしてくれている人達が居るのだが、彼らは呼ばれなければ屋内には入らない契約になっている(警備員の休憩や食事のための小さな建物が別にある)。実を言うと彼らは飾りだ、警備員がいると言うだけで犯罪の防止になるが、いざと言うときは家のあちこちに設置されているアレフさん特製の防犯魔道具が活躍することになるだろう。以前数人の男達が窓から忍びこもうとした時タロウが危ない目にあってネスレさんが助けてくれたのだが、その反省を踏まえさらに強固なものに改良されている。


 とりあえず、ドリスさん達に家族とエリスさんを紹介し、こんどは反対に皆にドリスさん、カイちゃん、サラちゃんを紹介する。自己紹介してもらおうかとも思ったが、カイちゃん、サラちゃんには荷が重いかもと考えた。それに何よりお腹が空いた。美味しそうな料理が並んでいるのに待つのは辛い、早く食べたいのだ。歓談は食べながらでいいよね。


 食事しながらの会話は皆の了承を得て念話で行う。私が仲介すれば念話が使えない人でも会話は可能だ。もっとも私は食べるのに夢中で会話には少ししか参加していない。隣のハルちゃんが呆れたように背中をつついてくる。仕方ないじゃない、今日の昼食は毒入りのスープしか食べていないんだ。 一方のハルちゃんはタロウの食事の面倒を見ながらも会話をリードしてくれている。頼りになる旦那様である。


 人心地がついてから会話に耳を傾ける。ドリスさんが「この惑星には素敵な女神様がいていいですね。」と言ってくれている。まあ、褒めてくれるのは良いが恥ずかしい。それにしてもドリスさんは"この世界"ではなく"この惑星"と言ったよね。惑星とは何か知っている様だ、ロキさんに聞いたのだろうか。

 話はそれから私とハルちゃんの馴れ初めの話になった。私が魔法が使われていない地球からやって来て、最初は魔法がまったく使えなかったと聞いてドリスさん達が驚いている。その後の経緯の話から話題が超越者のことになる。自分達の惑星から神が居なくなってしまった原因を初めて知ったドリスさん、カイちゃん、サラちゃんは驚いた様だ。


<< それでね、神界は今も困っているわけよ。惑星カーニンの様に神が居ない惑星がまだ数千も残っていてね。だから精霊様が惑星カーニンを安定させてくれるととても助かるの。感謝してるのよ。>>


 と私。いきなり会話に割り込んだら、ハルちゃんが「ようやく戻って来たか」という目で私を見ている。失礼な! さっきからちゃんと聞いてましたよ。さっきからだけど。


 カイちゃん、サラちゃんからは、自分達が神殿で生活することになるまでの話を聞くことが出来た。彼女達が住んでいた村が戦争に巻き込まれたらしい、生き残ったのがカイちゃんとサラちゃんのふたりだけで、ふたりで彷徨っていた時に教団の人に保護されたそうだ。悲惨な話である。ロキさんのお蔭で食糧の生産が回復しつつあるのにもかかわらず、国々の戦いはなかなか終わらないらしい。戦争が起きるのは人々に愛があるからだという逆説的な文書をどこかで読んだことがある。愛する人を傷つけられたり殺された憎しみは時を隔てても消えてくれない。戦争が勃発した原因である食糧難が解消しても、残った憎しみが新たな戦いを生んでいるのだ。そういえばドリスさん達は戦争や奴隷などの人権侵害を止めさせるために布教活動をしているんだった。自然災害や異常気象なら布教なんてしなくてもロキさんが止めてくれるものね。


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