表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/23

11. 誘拐

 さてこの魔道具をどこに設置するかなと考えていると、兵士がひとり部屋に駆けこんできた。


「この様な文が神殿に投げ込まれました。」


 と言って来る。手に握られている紙には、


"カイという子供を預かった。返して欲しければ捕えた仲間を全員解放せよ。"


 と書かれている。しまった! サラちゃんだけでなくカイちゃんも連れて行くんだった! と思うがもう遅い。すぐに探査魔法でカイちゃんの魔力パターンを探るが見つからない。今は探査範囲が広くなっているから、見つからないとすると何らかの結界に閉じ込められているか、瞬間移動で遠方に連れ去られたかだ。でも攻撃があった時に感じた強い魔力は捕えた3人だけ、それから考えて結界に閉じ込められている可能性が高い。周りの人達に確認するがカイちゃんがいつ居なくなったのかはっきりしない。私が惑星ルーテシアに向かうときには居たから、1時間ちょっとくらいの間に誘拐されたということか。それにしても神殿の中で多くの人と一緒にいたというのに...。そうなると犯人はこの場にいても怪しまれない人物ということになるだろう。いや、今は犯人捜しよりカイちゃんを取り戻すことを考えないと。

 ラザロさんを呼びに行ってもらい捕虜を解放したい旨を伝える。ラザロさんは悔しがっていたが女神の意向には逆らえず了承してくれた。私だって悔しいよ! でもカイちゃんの命には代えられないじゃない。でもただ解放するだけじゃないよ。私は念話でロキさんに呼びかけた。


<< ロキさん、聞こえますか? >>


 近くに居るとは思うのだが、見えないし魔力も感知できないので不安だったが、直ぐに返事があった。


<< 聞こえとるよ。わしに手伝って欲しいのじゃな。>>


<< そうです。ロキさんなら相手に気付かれずに尾行が出来ますよね。捕縛した人達の中で一番偉そうな人を尾行してくれませんか。カイちゃんを助けてあげて下さい。>>


<< 了解じゃ。>>


 よし、後はロキさんを信頼して待つしかない。捕縛した人達の魔力パターンを記憶して探査魔法で追跡することも考えたが、こちらの魔力を逆に感知されてカイちゃんの解放が遅れる可能性がある。


 時間はじりじりと過ぎて行く。捕縛した人達を解放してから1時間が経った。サラちゃんも仲の良いカイちゃんが心配なのか泣きそうな顔をしている。私には「大丈夫だよ。」と言って頭を撫でてあげることしか出来ない。「精霊様が助けに行ってくれている。」と伝えたいがここに居る人達の中に暗殺者の仲間がいる可能性が高いから迂闊なことも言えないのだ。念話で伝えたとしても、幼いサラちゃんが口にしないとは限らないしね。2時間が経過したころいきなり部屋の中央にロキさんとカイちゃんが現れた。瞬間移動だ。すぐにサラちゃんが泣きながらカイちゃんに抱き着く。カイちゃんは疲れている様だが怪我はなさそうだ。


<< ロキさん! ありがとうございます! >>


<< なあに、運が良かっただけじゃ。>>


 とロキさんは答えるが、後で聞くと精霊仲間を動員して解放した暗殺者全員を尾行してくれたらしい(仲間がいたんだ)。ロキさん、グッドジョブだ!


<< それとな、この神殿にもぐり込んでおる暗殺者の仲間じゃが、給仕をやっとるパライカという奴らしい。奴らが話しておったわい。>>


 私がカルロスさんとラザロさんに念話でそのことを伝えると、パライカさんはアッという間に捕まえられた。数か月前から神殿の職員としてもぐり込んでいたらしい。恐ろしい組織である。


 さて、暗殺者の組織がここまでやってくれるとなると、この神殿は安全とは言えない。暗殺の対象となっているドリスさんだけでなく、カイちゃん、サラちゃんもまた攫われる可能性がある。こうなったら3人とも我が家にお泊りだね。


「カイちゃん、サラちゃん、私の家にお泊りしない? 私の家なら怖い人達が絶対来れないからね。ドリスさんも一緒だよ。」


 と私が言うと、ふたりは顔を見合わせ、


「いいですか?」


 とカルロスさんに尋ねている。カルロスさんが承諾すると笑顔になった。2回も私に助けられたから私と一緒にいると安心なのか、それともドリスさんに懐いているのか分からないが、私の家に泊まるのは嬉しいらしい。そうと決まればドリスさん含む3人が着替え等の簡単な荷物を纏めるのを待って、惑星ルーテシアの私の家に瞬間移動した。

 到着したのは瞬間移動用に使用している部屋。この部屋は内側からのみ鍵を解除できるので部屋に突然現れるのを誰かに見られる心配が無い。すぐに部屋から出て、3人を客室に案内する。客室はふたつあるので、ひとつをドリスさん、もうひとつをカイちゃん、サラちゃんに使ってもらう。夕食が出来たら呼びに来るからと言い置いて私は急いでキッチンに向かう。今から夕食を3人分追加してもらわないといけない。キッチンで調理をしているエリスさんにお客様のことを伝えると笑顔で了承してくれた。いや、ここは怒って良いところだよ。「ごめん、手伝うから。」と言う私に、「大丈夫ですから。」と返してくる。 

 エリスさんいい人過ぎだよ。それにしても、もうずいぶん長く私達に仕えてくれているけれど結婚する気は無いのだろうか。以前それとなく聞いてみたのだが、その時は「女神様にお仕えできる今の生活に満足していますから。」という返事が返ってきた。それからも何度か聞いているが同じ返事だ。ドリスさんもルーテシア様が女神だった時代の影響を受けているのかもしれない。人口抑制のために新郎又は新婦のどちらかが跡継ぎで無いと結婚できないことになっていたのだ、そのため最初から結婚をあきらめている人が沢山いた。エリスさんにその気があるならこっそり若返らせてあげるのもやぶさかではないのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ