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夢の花シリーズ

悪役令嬢は、病弱すぎて破滅を回避するどころか溺愛されてます

作者: 明月 えま

悪役令嬢って大変ですよね。ええ、色々と。

初めてなろうに投稿した作品です。暖かく見守って下さい。

落ちはないです。とっても地味です。

私の名前はリリスティール。愛称はリリィ。14歳。非常に病弱な為、自分の家を出た事は無い。


私の家は、公爵家。先王の弟が、私のお爺様。


お爺様は、とても魔力が高く、お祖母様も希代の魔女だった為、その娘である母は、桁違いの魔女になった。

王族の跡目争いを避け、一人っ子となった母は、お爺様の職場、王国魔法師の父を婿取りした。

そこで産まれたのが私である。


初産で、仮死状態だった私に、母は、ありったけの魔力を使って現世に引き止めた。

その弊害は、ひ弱な身体に膨大な母の魔力と私が作り出す魔力を抱え込む事で、常に心臓と肺に負荷をかけ、ベッドから降りる事はほとんど叶わなかった。


起きているだけでも、フウフウと息が上がり、顔色も悪い。筋力も無く、そんな状態なので、食欲も無く、不健康そのものだ。


髪の色は、魔力属性に大きく影響を受ける。光の魔女の母は見事な金髪で、炎の魔術師の父は、陽の光に透かすと優しいオレンジに見える不思議な赤髪。そして私は、黄泉に片足を突っ込んだからか。まだ、片足を突っ込んでいるからか?闇属性の漆黒の髪。

産まれた時は、確かに母の魔力の影響で金髪だったが、最近、やっと、完全に自分の魔力に置き換わったらしく、窓辺で透かしても薄くなる事も無い深淵の様な黒髪になっていた。


ベッド上で座る時間、車椅子に座る時間が少しずつ長くなり、一日のうち、食事と日光浴に車椅子で行けるようになった。


5歳ぐらいまでは、魔力を暴発させるから、常に感情を抑えないといけなくて、非常に困った。3歳ごろから、前世の夢を見て、知らない世界に怯えた。

5歳ぐらいで、しっかりと思い出してから、前世の夢を見ても、取り乱す事もなく、体調が悪くて魔力酔いの発作が起きても、暴発させる事なく押さえ込んだ。

日本人の転生者。何てありがちなシチュエーション。今更、何の捻りもない。

果たして、ここは、全く未知の世界なのか。何かの物語の中なのか。よくあるゲームの中なのか。病弱すぎて、日々を過ごす事にいっぱいいっぱいな私には、分からなかった。


魔力を暴発させて、侍女に怪我をさせた事がある。きっちり思い出す原因となった、5歳の発熱の時だ。

理解出来ない前世の不可解な夢と、高熱でうなされていた。

汗を拭いてくれていた優しい手を怖がって、魔力が暴発。侍女のマールは、壁まで吹っ飛んだ挙句、後頭部を切って血まみれとなったらしい。

記憶が戻った後は、相当苦労した。人に怪我をさせないよう、常に心を穏やかに保つよう、心がけた。マールは、私を怖がったが、数年かけて、やっと私の侍女に戻ってくれた。

今でも、長い髪に隠れて見えないが、怪我をした時の痕は後頭部に残っているのだと、他の使用人が話しているのを聞いた。


自分のせいで人に危害を加えるなんて嫌だ。

我慢したのよ。とっても。

去年までの記憶は、ベッドで耐えていたばかりで、苦行のようだった。

有り余る魔力のせいで、時折、意識が朦朧としていた。


こんな私に現れた救世主は、昨年までは名前だけだった婚約者。名をクロード・ハリスと言う。

彼は、2つ年上の16歳。

侯爵家の次男で、顔もよく、頭も切れる。王立魔法科学学院では、魔法科トップらしい。

魔法が使える者は魔法科、魔法の才がない者は、科学科で学ぶらしく、魔法と科学が混在した世界だ。外の様子は見たことは無いが。


幼少期から、政略的に婚約していて、年1ぐらいは会っていたが、事務的な物だった。

お決まりの挨拶を述べて、彼が帰る。面会時間は約5分。


珍しく、体調が良く、春の陽気に誘われるように、車椅子で日光浴をしながらの対面となったのだった。


魔力酔いの発作が出そうになって、クラリと前に倒れそうになった所をクロードが支えた。

その時、クロードの中に、私の魔力が流れ込んだらしい。

クロードを弾き飛ばさなくて良かったと、朦朧とする意識の中で、謝罪した事は覚えている。

元々、婿入り出来る立場と、私と同じ闇属性魔力持ちと言う事で選ばれた彼だ。属性が違って、魔力が反発して起こる惨事を両親始め、周囲はとても心配したのだ。

クロードは元々、魔力もその器も強く、頭も良かった。

私の魔力を吸い取れる?と気がついた彼は、その1週間後、再び私の元を訪れ、私の魔力を吸い取って行った。

魔力値が高く、学校での訓練その他で放出量も多く、魔力不足を感じていた彼と、魔力を溜め込み過ぎて、寝たきりに近い私との利害が一致したのだ。


それから、クロードの魔力吸引は、どれくらい私から抜くのか、彼の匙加減で微調整されて、半年経つと私のベストコンディションまで、ゴッソリ魔力を抜いて行ってくれるようになった。

そうなると、起床時間が長くなり、食事も取れるようになって、少し肉が付いてきた。


1年経過すると、拒食症みたいな病的な痩せから、ガリガリレベルまで戻ったのだ。

両親なんて、それはもう、狂喜乱舞なレベルでお喜びですよ。聖属性の母に至っては、魔力が反発するからと、乳児期より、触れることすらままならなかった娘を抱きしめられると、ベッタベタだし、父はホッとした様子で、毎日忙しい中、夕食を共にするよう、仕事の調整をして早めに帰って来るようになった。


それにしても。

「リリィ。俺のリリィ。愛してるよ。可愛い。もう少し、体力がついたら、俺が外の世界に連れて行ってあげるね。大丈夫。ずっと抱きしめててあげるから心配しないで。本当は、他の誰にも見せたく無いぐらいなんだけど。俺のリリィの可憐さを見せつけてやりたい気持ちもあるんだ。」

クロードは、砂糖吐けるぐらいの勢いで愛を囁く。

膝に乗せられ、髪を手ですくように触られる。

密着したまま、魔力を吸引した方が、私に楽だと彼は言うが、ここまでの過剰な接触は本当は不要なんじゃ?と、最近気がついた。




さらに1年が経過した。16歳になった私はガリガリから、ガリに変わった。よく言うと、前世のパリコレモデルみたいな体型です。

ちょっとふくよかでいいから、ぼんきゅっぼんな体型に憧れるのに。

とても残念な事に、栄養とホルモンバランスが悪かったからか、貧乳です。

ああ。乳が欲しい。


今日は、クロードの学院卒業パーティーらしく。私は、婚約者として、短時間だけ参加する事となった。少しの間は歩けるようになったんですよ。

私のここ2年は、素晴らしい進歩です。


しかし。やっぱり来るんじゃなかったなぁ、なんて、パーティーの席で思います。

病弱、引きこもりだった私は、簡単な淑女マナーしか知らず、ダンスをするだけの体力も無い。

ファーストダンスが始まっても、クロードは私から離れない。

社交が全くわからないので、居てくれた方が助かるのは、間違い無いのだけど。誰が誰だかわからない上に、沢山の人に挨拶される。


先程、宰相様の妻になられたレイローズ様(クロードの同級生)が、私を休憩フロアに誘ってくださった為、クロードは同級生の第3王子やその他の主要人物に挨拶してくるらしく。挨拶が終わったら、私を送りに屋敷に戻るらしい。


「ねえ、リリスティール様。だいぶお顔色が良く無いわ。随分、無理をして出席されたのね。お可哀想に。クロード様も、こんな無理させるなんて、ひどいわ。体調がよろしく無いって聞いてましたけど、これ程とは。」

レイローズ様は、綺麗な水色の髪がキラキラ輝いて美しい。

「お気遣いありがとうございます、レイローズ様。私、普段からあまり血色が良くないのです。今日は、体調はいいのですわ。」

「そうなんですの?それはそうと、リリスティール様は悪役令嬢ってご存知?」

「悪役令嬢でございますか?小説とかの?」

「そうですわ!」

レイローズ様が溢れんばかりの笑みで微笑まれる。

「花森は?」

「はなもり?ごめんなさい。ほとんど、本は読んでなくて。本の題名ですか?」

というか、読む体力がなくって。

「うふふふ。ねえ、リリスティール様、私、千葉県出身なの。あなた、どこの方?」


えっ?

えええええっ?

「この世界、恋愛小説なんて無いのよ。とってもつまらないわ。だから、悪役令嬢なんて言葉、無いの。それを理解できるって事は、日本人でしょ?」

「あっ・・・。熊本です。」

「うふふふふ。嬉しいわ。私が知ってる転生者、貴女で2人目よ。道理で、ストーリーがめちゃくちゃになってるはずだわ。」


「リリィ。待たせてすまない。帰ろうか。」

フッと微笑んで、クロードがソファに座っていた私をお姫様抱っこする。

「あらあら、まあまあ。クロード、貴方、そんな顔もできるんですのね。」

「リリィだからね。まあ、君がリリィを見ていてくれて助かった。ありがとう。」

ツカツカとクロードが歩き出す。

「待って、クロード。私からもレイローズ様にお礼を言わせて。」

「レイローズは、伯爵家の出だし、嫁いでも侯爵家だから、君が話す時に敬称は要らない。」

レイローズ様の方に向き直りながら、そんな突っ込みをされる。

「もう。クロード、そういう事を気にするなんて。レイローズ嬢、ありがとうございました。また、ゆっくりお話したいわ。」

「ええ、リリスティール様。でも、まだ体調が万全では無い様子に見えますわ。お茶会となるとご用意も大変でしょうし、お見舞いという名目で今度、お伺いしても?」

レイローズ嬢がフワリと笑う。

「ええ。もちろん。楽しみにお待ちしていますわ。」



後日談。

この世界、『夢の花は森の乙女に』とかいう乙女ゲームの世界らしくて。

何と、私、悪役令嬢ポジション。

ストーリー通りなら、魔力の暴発を繰り返し、他者を傷つけながらも次第にコントロール出来るようになった私は、日常生活が送れるどころか、元気いっぱい、才能に溢れ、伯爵家のクロードと婚約解消し、第3王子の婚約者として、ヒロインの前に現れるのだとか。

そのせいで、クロードは病んだ攻略対象者になるはずだったみたいで。

ストーリー通りなら、王子からの断罪イベからの婚約破棄、修道院送り。または死亡のバッドエンドと聞いた時には、ショックで不整脈は出るし、意識飛びかけた。

レイローズ曰く、転生者がゴロゴロいるし、実際に、私達にとってはリアルだから、メインストーリーを追える筈が無い、他にも転生者がいるかもとのこと。

因みに、テンプレ通りのヒロインは、男爵令嬢で、実際に現れたものの、大人しく常識的で、逆ハー要素は全く無く、幼馴染みの騎士といい仲だとか。

転生者なのか?と、思ったが、カマかけても全然、引っかからなかったと。


レイローズは、いわゆる悪役令嬢とりまきのモブキャラ設定だったらしく。

まさかの、レイローズの夫の宰相様が、転生者。

この世界の社交に馴染めず、夜会で疲れ切ってた所を宰相から転生者と見破られ、あれよあれよという間に婚約、結婚となり、巻き込まれ破滅のフラグは叩き折られ、幸せに生活しているらしい。

というか、惚気が、凄すぎて、ついていけない。


幼少期に、魔力の解放回路を作れなかった私は、ほぼ成人なので、徐々にしか解放回路を作れないらしく。

私を離したがらないクロードを説得して、魔力解放訓練を週1、クロード付きでやっています。

徐々に、体力も、肉も着いてきたけど、まだまだだわ。

私にベタ甘なクロードは、外では別人のように冷たいらしく、学生時代のアダ名は魔王。

魔王に溺愛されて、今日も私は幸せです。


読んで頂いて、ありがとうございました。


2019.1.20

ランキング入りしていて驚きました。

感謝致します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 転生者がコロコロ→ゴロゴロかな。 [一言] ゲームは知らなかったようですね。クロード視点も面白そうですね。レイローズ編での裏話とかありですね。
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