武闘会の乱入者 、多勢 その3
一週間で投稿できませんでした...
つまりは忙しかったというわけで...
アートと男の悪魔の号令を合図に、兵士達は、長々とした槍を、鋭利な剣を、強固な盾を高々と掲げ、悪魔達は、凶悪な爪を、醜悪な嘴を、怪奇な角を突き出し、皆一斉に走り出した。
剣と爪、槍と角が激しく交差し、金属と金属が擦れるような不快な音、荒々しい雄叫びと絶叫が至る所から響き渡った。
一体の悪魔に数人もの兵士が囲い込む。
一斉に槍を突き、剣を振りかざすも悪魔の爪の一振りで振り払われた。
羽を持つ悪魔は、空を飛び回り兵士を翻弄した。
四足歩行の悪魔は、布陣する兵士の中を荒々しく走り回る。
それでも兵士は負けじと徒党を組み、陣形を整え迎え撃つ。
「では、私はあいつの首をとってまいります。後は、よろしくお願いします」
アートは、手に持った身の丈はありそうなほどのハルバードの切っ尖を男の悪魔に突きつけた。
その顔は、またも笑顔の消えた真率な表情になっていた。
今、彼は何を思っているのだろうか。
強敵と一戦交える緊張で顔が強張ったのか、アリスを狙われた怒りで笑顔が消えたのか。
しばらく、無意識に俺は、見つめてしまった。
「大丈夫ですよ。何せ大将とったら金一封ですからね!すいませんがいいとこ取りさせてもらいます。心配しなくても明日のお祭りは奢りますよ!」
......。
バチンッ!
俺はアートの背中を思いっきり強く叩いた。
「おぅ!期待してるぞー!」
アートは、しばし呆然としてからフッと鼻で笑った。
「えぇ!そうですね。期待していてください!」
アートは、ハルバードを強く握りしめ悪魔の元へ走り出した。
「...さて」
辺りをグルリと見渡した。
アリスとリナは居るがミアだけが居ないところを見るに他の貴族と一緒に避難したらしい。
まぁ、悪魔の狙いはあくまで神らしいから俺たちと一緒に居るよりは安全に決まってる。
それに守る対象が少なくなる事は有り難い。
しかし、こんな人の多い場所でなければアリスがルナになって一掃してくれただろうに。
「愚痴っても仕方ないか。じゃ、いっちょ見せてやりますか!Bランク冒険者の実力を!」
あえて下らない事を大声で言って、高鳴る心臓を、震える手を誤魔化した。
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短剣を通じて筋肉質な肉を裂く感触が、手に伝わる。
休む暇なく次の悪魔が迫ってくるのが、スキルを通じて肌で感じられた。
悪魔の爪が空を割く。
それは当たれば引き裂かれ、吹き飛ばされ、肋骨が肺に刺さり、腕がへし折られ、首が飛びかねない一撃。
しかし、そんな強靭な爪を自分の尻尾を使い上手くバランスを取って回避し、逆に此方の短剣の届く間合いへと一気に距離を詰めた。
悪魔が体勢を整えるよりも速く一閃。
叫び声さえ上げられずに倒れピクリともしなくなった。
カツヲの一本釣りのように休みなく切り続け、もう10体は、倒したのだろうか。
確かに目に映る悪魔の数は少なくなっている。
一度、護衛対象であるアリスを確認する。
リナがアリスの手を引いて悪魔のいない方へと、俺が戦いやすい場所へと移動していた。
「リナが意外に役に立ってやがるニャ...」
「うるさいわね!私だってやる時はちゃんとやるわよ!」
額から流れる大粒の汗を手で雑に拭き取った。
「ハァ...ハァ...ハァ...」
流石に息が切れてきた。
相変わらずこの体は体力がないと愚痴る。
俺がプルーから教わった戦い方は、あくまで対人戦用で有りスピードに乗り一撃で相手を沈める技は、暗殺術に近かった。
だから、悪魔を相手にしなくてはいけない、また誰かを守りながら戦うにはあまりに不向き。
故に無駄に体力を奪われてしまっていた。
「よっしゃ!もう一息ニャ!」
頬を叩いて気合と集中力を取り戻す。
ドンッ!
そんな矢先、何かが近くに飛んできた。
「グッ...」
ボロボロになったアートだった。
「おい!大丈夫ニャ?」
「えぇ、まだまだ大丈夫です」
アートは苦虫を噛み潰したような表情で
「それよりもその口調、可愛いですけどどうしたんですか?」
「...ほっとけニャ」
「フフ、そうですか」
アートはグルリとあたりを見渡す。
「しかし、このままでは不味いですね」
今度は本当に苦虫を噛み潰したような表情をした。
数では勝っていても個体差で負けていた。
このまま行けばジリ貧で負けてしまうだろう。
となれば、早く大将の首を取るしかないのだが...
不敵な笑みを浮かべる男の悪魔を睨みつけた...
ん?男?
「あいつ人型二ャ!」
「ど、どうかしましたか?...」
突然叫んだ俺をまるで奇人変人を見るような目で見ていた。
「アート!あとは俺に任せてアリスを守ってくれるかニャ?」
「しかし...」
アートは、口を少し開けては閉じ、じっと俺を見つめた。
「心配しなくていいニャ。ちょっと金一封が欲しくなっただけニャ!」
「...そうですか。ではまた祭りは奢ってくださいね」
アートはいつもの爽やか笑みを見せて笑った。
「...ま...任せとけニャ」
アートにアリスを任せ、悪魔の元へと走った。
「待たせたニャ!こっからは選手交代ニャ!」
「...お前、前会った時は普通に喋ってだよな?...何だそのふざけた口調は!」
「ふざけてないニャ!」
「ニャ!を止めろ!」
「辞めたくても辞められないニャ!!」
「あぁ!もぅ!お前のせいで全然カッコよくないじゃないか!アホ神!」
「そんなこと言われなくても知ってる二ャ!」
何とも締まらない最終決戦が始まった。
最近色々と色々と用事が重なります...




