偽物姫の苦難、その2
現実も物語も展開は突然に。
今回ちょっと長いです。
感想も突然唐突にください。
不味い不味い不味い!
どうすんだよ!!!
頭の中は堂々巡り。
無限ループに陥って処理が追いついていない思考を冷やすため一度深呼吸をして落ち着かせる。
しかし、冷えた頭で最近の交友関係について考えてみると、とあることに気がついた。
頭のイカれた甘党女神。魔女っ子令嬢。無差別殺人少年団。ストレス狩りの死神。人化する狼。クレイジーわがまま姫。
ろくな交友関係をしていない。
ならばこの出会いも必然?
何て現実逃避に走ってみた。
「あぁ、そうだ。アリスティアよここに呼んだのは、言い忘れていおったが、今晩貴族たちへの挨拶回りがあるからだ」
王様は突如、そんな爆弾的発言を投下した。
…。
無茶振りおじさんの称号を贈呈いたします。
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貴族への挨拶回り。
なんて、文字に起こせば大層大仰な物に見えるが実際には大したことは無かった。
いや、しんどいことこの上なかったのは間違いないが、言うなれば、ゴールデンウィークや年末年始とかなんやらで親戚一同が集まる集いに似ている。
遠い遠い顔も覚えてない親戚から「大きくなったねぇ」やら「大層可愛くなって」やら覚えてもいない昔の自分の話を赤裸々に延々と聞かされるような。
どんな対応をしたらいいのか分からず、ニッコリと営業スマイル。
そうすればまた可愛いやら何のって堂々巡り…
しかし、これは相手が大人だった時の話。
同世代になるとまた話は変わる。
頬を赤らめモジモジと話す少年やハキハキと元気よく趣味やら休日の過ごし方やらを訪ねる(しらねぇーよ!)少女、可愛いやら美しいや何のって美辞麗句を雨霰のように ー 暴風雨のように並び立てる少年と十人十色の会話を数十人とした。
少年少女達の青春ラブコメ活劇に見せかけ少女の俺が付いて行けるわけもなくただニッコリと微笑んで黙々と話を聞く事しか出来なかった。
ある種拷問のような ー アリスじゃ無いけども ー クソ面倒な貴族たちへの挨拶回りは、三日月が高く昇った頃に御開きとなった。
そろそろアリス達が帰ってくる事かと思い部屋に風のようにそそくさと立ち去ろうかとした時、無茶振りおじさんに呼び止められた。
「アリスティア、ちょっと話がある。付いてきてくれないか?」
「嫌です。」
何て目の前の権力が具現化したかのような人物に言えたらどれだけ幸せなのだろう。
自分の権力への弱さが憎い。
俺はしぶしぶトボトボと付いて行くことにした。
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連れてこられたのは、芝生が丁寧に整えられた中庭。
当然夜だから人っ子一人いない。
月明かりの下ただ広い芝生。
何もなくとも何となく身構えてしまう。
「今日は、助かった。アリスティアが愛想よくしてくれたおかげで円滑に円満に進んだ」
王様は話を切り出した。
「さて、私は前置き、紆余曲折はあまり好きじゃ無い。いきなり本題、単刀直入に聞く」
一息置いてから、力強くこう言った。
「で、アリスはいつ帰ってくるのだ?」
「…。」
どっと鳥肌、寒気、冷や汗が出た。
今までで一番やばい。
死ぬ…。
リアルで首が飛ぶ。
運が良くて社会的に飛ぶ。
そんな物騒なことを考えていると。
「…アッハハ!なに、そんなに怯えなくてもいい。私は別段怒ってなどおらん。大方アリスに頼まれたのだろ?しかし、流石に娘がこんな時間まで夜遊びして心配しない親でもないでな」
今までに無い笑顔でそう愉快に笑った。
どうやら俺の首は繋がったままらしい。
「生まれ時からアリスを見て来たのだ。アリスがあんな愛想のいいわけがない事を知っておるのでな」
あ。そうかあのお姫様が営業スマイルをするわけ無いか。
「それに、そなたから、アリスと似た気配を感じる。そなたも」
「失礼します!」
王様の話を遮って突如アートが誰もいない二人だけの中庭へと駆け込んだ。
しかも、どこか慌てた様に。
「なんだ!しばらく二人きりにしてくれと言っただろ!」
王様が迫力のある喝を飛ばす。
しかし、アートはどこ吹く風と言った態度をとる。
「すいません。急様なものでして」
「何の用だ?」
「いえ…用があるのはお姫様の方でして」
アートは、草を上を音もなく、サラリサラリと流れる様な動きで此方へと歩き出す。
殺気という物はあまりには経験不足で実践不足な自分には全くし理解できないものだが、さっきとは全く別の
心がさわぐ。
身が震える。
寒気がする。
そんな嫌な気配を感じとった。
俺は後ろも振り向かずに、懐にしまい込んでいたナイフを振り抜く。
ガンッ。
もはや聴き慣れてしまった金属と金属のぶつかる開戦の音が鳴り響いた。
ナイフが腕に衝撃を伝え、その衝撃が腕にしびれを引き起こし、最後にそのしびれこそが自分の判断が間違ってなかったことを証明する。
アートは持ち手に鈴のついた真っ黒で真っ直ぐのか細い剣を振り下ろしていた。
なんの脈絡もなくに。
アートは、視線がと交わると、口が裂けんばかりの笑みを浮かべ軽快に後ろへと飛び退いた。
「ギャハハッ!!!まさかまさかのハズレ!偽物!ご同業様だったとは!ギャハハハハッ!!」
アートが歪んだ笑みで醜く不快でやけに甲高い声で高笑いをした。
チリン。
アートは剣についた鈴を揺らし音を鳴らした。
緊張の一幕にふさわしくない音が鳴り響く。
しかし、アートの着ていた元の品の良い服が何かに引っ張られるように裏返り小汚い真っ黒な服へと変化する。
それと同時に顔もぐにゃりと歪み歪み形を変えアートとは似ても似つかない顔へと変化した。
「初めまして。私は、ゴースト七色幹部が一人、クロ。仲間内では『盗取のクロ』。盗みに暗殺、潜入までなんでもござれ。入り用でしたら是非ご一報ください」
クロは足を一歩引き膝を曲げ愛想のいい笑みを浮かべ頭を下げた。
言っていることを抜きにして態度だけ見れば、とてもまともな人間にみえる。
が、それも一瞬のことだけだった。
すぐに笑みが歪み人を馬鹿にしたかのような顔へと戻った。
「いやはや不幸。いやもはや良好?まさかまさか、こんなところで雅 桃雅の『終わり6遺作品』が一品、獄品の『封剣』出会うとは」
そう言って舐め回すようなねっとりと、俺の手に持ったナイフに視線を向けた。
「ごくひんのほうけん?」
時間稼ぎに質問を返す。
それと同時に王様に片手で逃げるように促し助けを呼びに言ってもらよう合図を送る。
「ん?何だ?」
が、うまく伝わってないようだった…
「まさかまさか!それが何か知らないで使ってたのか!?さすがにお前、この業界で生きていて『終わり6遺作品』を知らないのはやばいって!もはや有名すぎて一銭にもならない情報だよ!ギャハハハ!!」
一体何がおかしいのか、不快な声で高々と笑った。
「なら、ここは一つ先輩として、マニアとして解説してあげようじゃないか。あ、でも、時間がもったいない。戦いながら話そう。長く生き残れば冥土への土産話が増えるぞ」
いきなりクロは、地面を強く踏みしめ砂埃をあげせまり来た。
俺はとっさに『猫の予感』を発動させた。
「雅 桃雅っていういのは、100年以上も前の伝説的に有名な鍛冶師のことだ」
上から振り下ろされた剣をナイフで受ける。
軽いが速い。
反撃なんてする暇もなく次の攻撃が飛んでくる。
「雅が最後に作った6個の武器をまとめ『終わり6遺作品』という。」
ガンッ
受けるのが精一杯だった。
「それらはそれぞれ、散品の『鎌変』、禁品の『喝棒』、闘品の『嘔鎧』、真品の『仗擬』、獄品の『封剣』、灰品の『刀鬼』と呼ばれ、それら一本でも国同士の争いが起こるほどの価値のある代物だ」
クロは剣先が見えないほど素早く巧みな斬撃を幾度となく繰り出す。
もはや目では追いつかず『猫の予感』で感じ取れる感覚だけで捌ききっていた。
隙さえ出来れば、一発逆転の使いたく無い大切り札が使えるというのに、クロはその暇を与えてはくれなかった。
「そのんでお前の持ってるのが6作品群の中の一つ獄品の『封剣』。『封剣』の刃文は「人を虜には最適だが、人を狂人に変えるに十分すぎる」と謳われるほど見事な色、形、光沢を帯びている。まさに極品いや獄品というわけだ」
クロは、不意に斬撃を止めフワッとした動きで距離をとった。
一息ついたクロは見せびらかすように手に持った真っ黒の刀身の剣をブンブンと振り回す。
「そして、これも!6作品群が一つ真品の『杖擬』!目をかっ開いて見やがれ!!ギャハハ!!」
クロは剣を月の光に当て輝かせた。
「はぁ…はぁ…。ん?!ニャんの話??」
「…お!お前!!!絶対殺」
「ニャーッハッハハハハ!!!!!」
突如、有頂天、最高潮のクロの話を無慈悲にも遮って、摩訶不思議な笑い声が屋根の上より夜空に響き渡った。
三日月の下で輝く銀の髪。
ひょこりと生えた大きな猫耳。
ゆらゆらと揺れる尻尾。
しかし、その小さな体、その管楽器のように透き通る声。
月明かりによって逆光になり顔がよく見えないまでもまさしくあれは。
「...アリスちゃん?」
いや、本当に文字通り猫かぶってたとはね…
スマブラ楽しいですね!
イカちゃん可愛い。
スイッチ買おっかなぁー




