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邪神神殿、月15万円

春の花粉で鼻と目をやられ、私生活が日に日に忙しく、小説の先が思いつかない。

そんなこんなで、あれよあれよと日がたちました。

すいませんでした…

「あんの!クソ女神ガァああああ!!!」


 邪神は激怒した。かの邪智暴虐の女神を必ずやのぞかなくてはならぬと。


 俺は空に向かって吠えた。

 が、当然ながら声は帰ってこなかった。

何故ならば眼に映る風景は緑豊かに小鳥が歌う森。

 そして後ろを振り向けば、見上げるほど大きく立派なしかし生活感のない無人らしき白い神殿。


「…でけぇ」


 俺は半ば無意識にその美しい神殿へと吸い込まれるように歩き出していた。


 トンと足に何かがぶつかった。


 何かと思い足元を見てみると丁寧に綴じられた本が一冊とメモ用紙、そして豪華な手鏡が置いてあった。

 何気なくまず手鏡をとった。


 フワっ


 不意に眼についたのは、鏡に移った銀の光る髪。

 思わず鏡を2度する。


 その鏡の中には大きなネコ耳にフサフサのシッポ、銀の艶やかな髪を持ち、そしてまだあどけなさの残る理想の獣の美少女がいた。


「.........」


 俺は周囲を見渡し誰もいないことを確認する。


「ニャ、ニャー...」


 鏡の中の少女は指を丸くした手を顔に添え顔を赤くし恥ずかしそうに呟いた。


「よし...て!!ちがーう!!!なんじゃこれはあぁッ!!!」


 バリンッ


 俺は反射的に近くにある木へ手鏡を全力で手鏡を投げつけていた。


 顔をペタペタとさわる。

 ツルツルモチモチの弾力の肌、サラサラシットリとした艶のある髪。


 体のあちこちを調べる。

 白く細い指、形のいい胸、細く引き締まったウエスト。


「うわぁあああああああ!!!!」


 言葉にもならない悲鳴をあげた。


 何度か雄叫びをあげた後、ふと、半狂乱になりながらもメモには何が書いてあるのかが気になった。


 メモを広げる。

 クッキーの食べかすがポロポロと落ちた。


 そこには意外にも達筆な字で数行、文が書かれていた。


 ーーーーーーーー


 背景、邪神君へ


 君がこれを読んでる頃には、今頃私は君の家でお菓子を漁り終わっている頃だろう。

 あのお菓子はあまり美味しくなかったから仕方のない話ではあるけど...

 でもまぁ、お礼としてはなんだが鏡を置いといてあげる。

 ありがたく見るように。


 美の女神・リナより

 ーーーーーーーー


「ふん!」


 メモ用紙を粉々に引きちぎった。


 そして、最後に本を手に取る。

 読まずに捨てなかったのは一つだけ毛色が違ったから。


 本をじっくりと見る。

 丁寧な綴り方にふさわしい丁寧な字でタイトルが書かれていた。


『お願いノート』


 手を天高く掲げた可憐な、投球フォームをしていた。


 一瞬タイトルを見て、醜の女神の顔が頭に浮かんだからだ。

だがしかし、よく見ると字体が違うことに気づいた。

 怒りの燃える頭を冷やし、もう一度、本の表紙を見る。


『優しさの女神・エマより』


 表紙の下に申し訳なさそうな小さな字で書いてあった。


 つまり、これはアバズレの女神とは別の女神が書いたってことか。


 その場にあぐらをかき座り込みそして、ペラペラと本を読み始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 パタン。


 本を優しく閉じた。

 中に書かれていたのは、まず始めにこの世界に来てくれたことへのお礼、次にこの世界の常識、そしてそれをわかった上でやって欲しい事と力の使い方、最後に丁寧にも辛いかもしれないけど頑張ってくださいとの激励のメッセージ。


 思わずその優しさに目頭が熱くなった。


 間違い無く、この人こそ本物の女神様だ。


 ガサガサッ


 優しさに感動していると近くの茂みが揺れ動いた。


「ガウガウガー!!」


 目の血走った普通のサイズよりも一回りも二回りも大きい茶色い毛の狼(テレビでしか見たことがない)がのっそりと表れた。


 バタリ


「あぁ、あー、あぁぁ…」


 狼を見てとっさに逆の方向を向き逃げようとした時、盛大につまずいた。


 マズイマズイマズイ。頭の中は、その事で埋め尽くされた。


「待て!ステイ!!ハウス!!!」


 狼はガルルゥと唸りつつゆっくりと近づいて来る。


 万事休すかと思えたその時、脳裏に一筋の光明が浮かんだ。


 バッと狼の方へ手を向ける。


「汝に知識と言う生きるすべを授ける!!『贈り物(ギフト):ノーレッジ』!!」


 手がキラキラ光り、その光は狼を包み込んだ。


「クゥー…クゥゥ」


 狼は前足で頭を擦るように苦しんでいた。


 今のうちにと、無様に這いずるようにそそくさと神殿の中へと逃げ込んだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「…」


 思わず息を呑むほどの圧倒的美しさ。

 神殿の中は、あるもの全ての一切合切が国宝級美術品レベル。たぶん...

 頭にはすでに先ほどの狼の事は抜け落ちていた。


 あたりをキョロキョロと見回しならが、奥へと進む。


 目の前にひときわ大きな鉄の門と立派な女神の像が現れる。

 匠の技を感じる装飾が、たくさん施された門はとても一人では開けられそうにない。

しかし、物は試しと押したり引いたりしてみても案の定ビクともしない。

 女神の像に仕掛けでもあるのかとよくよく観察する。


『美の女神 リナ』


 像の下にデカデカと書いていた。


 一発軽く蹴りを入れておく。


 次に門を調べる。

 特に変わったものもなく、やはり押しても引いてもビクともしない。


 どうしようかと扉の前でウロウロと歩き回り、このまま開かなければ扉の前でお祭りでも開こうかと考えていた所。


 ゴゴゴゴッ


 鉄の扉が鈍重な音を鳴らしながらゆっくりと開いた。


「うおっ!」


 突然の事で驚きつつもしっかりとした足取りで、すぐに逃げれるように歩を進める。


 そこはまるで、王座の間。

 誰もいないというのに整然とした態度を取らなくてはいけないと言った強迫観念に囚われてしまいそうな雰囲気の空間。


 王が座るであろう椅子までたどり着いた。

 だが、視線は誰もいない王座では無くその後ろの壁に注がれた。


 壁には大きな地図が描かれていた。

 地図のほとんどを我が物顔で埋め尽くす大きな青い点の集団と、地図の端の方に申し訳無さそうに小さな赤い点が数個描かれている。


 ふむなるほどと、その地図を見て納得する。


 本物の女神エマ様より授かった本に書いていた俺にやって欲しい事は

『この世界で虐げられている()()を救ってほしい』

とのこと。


「なるほど、青い点が人間で赤い点が魔物か」


 この世界の魔物は人間になすすべなく倒され絶滅しかかっている、その為なんとか助けてくれないかという事が分厚い本の大部分にくどくどと何度も何度も書かれていた。


 そして魔物を救うために俺がこんな姿(ナリ)になってまで得た力は、『贈り物(ギフト)』と言う魔の物だけに力を与える物だけらしい。


 しかし、そんな魔物の救世主となるべく力を持って生まれたというのに救うべき魔物に襲われ、ついさっき犬の餌で今世の短い命は終わりかけたのだ。


「あぁ、エマ様!どうか、お願いですからせめてもう少し力を、お与えくださいませ!!」


 天を仰ぐように女神に祈った。

魔物が仲間になる展開期待しますか?

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